経済以外の要因も見落とせない。11月には米大統領選挙が行われるが、候補者指名争いの山場である5日のスーパーチューズデーの結果がまとまり、共和党はトランプ前大統領が圧勝し、前職トランプ対現職バイデンの両氏による対決の構図がほぼ固まった。
既に「もしトラ」「ほぼトラ」ともささやかれているが、トランプ氏が勝利し大統領に返り咲くと、米中、米露関係がどうなるかなど政治・外交面で不透明な部分は多い。日本でも岸田文雄内閣の支持率が低下するなど、今後内政面での動きが経済に与える影響は無視できない。
こうした状況の中で、足元の株価上昇はバブルか否か、今後の株価の動きはどうなるのか、という問いについての答えは「まだわからない」というのが、おそらく現段階での最も誠実な回答だろう。そうした前提に立って短期的な動きを予測するならば、長年にわたって市場を見てきた株式評論家の植木靖男さんは「今後一定の調整が入る可能性があるが、基本的には当面上昇が続く」と見る。
渦中にいると見えないものも多い
バブル崩壊の後遺症が少しずつ出てきた1992年春、ある地方銀行の入行式で行員代表が「バブル経済の崩壊を受けて~」と他人事のように挨拶を始めたのを見て強烈な違和感を覚えた記憶がある。新入行員に罪はないが、「バブルに加担したのはいま君がいる銀行なんだよ」と思わず言いたくなった。失われた20年とも呼ばれるその入口の時期は、銀行が不良債権の山を築いているという当事者意識がまだ希薄な時代だったのかもしれない。
経済事象に限らず、物事の渦中にいると、自分が今どんな状況に置かれているのか分からなくなる時があるのは確かだが、情報収集が以前に比べて格段に便利になっている今、経済指標やデータの動きを見ながら状況判断することが可能な時代である。現在の局面がバブルかそうでないかは、情報を吟味しながら、一人ひとりが冷静に判断するしかないだろう。
バブル崩壊で社会や経済が強烈な逆風を受けた轍を踏まないためにも、底堅い相場が続いて欲しいと願いつつ警戒も怠らないようにする。これが個人投資家や企業経営者がいま心得るべき基本的なスタンスなのだとバブル世代の筆者は思う。