2024年7月22日(月)

経済の常識 VS 政策の非常識

2013年11月27日

 同じことは研究開発投資についても言える。日本の科学技術研究費の対GDP比率は直近で3.6%とアメリカの2.9%、ドイツの2.8%より高いが(文部科学省「科学技術要覧」による)、実質経済成長率は先進国の中で最低である。しかも、投資比率が低下してきたのに対して、研究費はリーマンショック時まで、傾向的に伸びてきた。さらに、政府負担の研究費は国際的に見て大きくない。すなわち、民間企業の研究費が大きいにもかかわらず日本の成長率は低いままなのである。政府の研究費が大きいのであれば政府の非効率の問題だが、民間企業の非効率はなおさら理解するのが難しい。

 ただし、これには日本の生産年齢人口が減少していることも考慮しなければならない。人口が減っているのに成長したいのであれば、より機械化するか、新たな技術に頼るしかない。だから、日本の投資や研究費が大きくなるのは合理的な面がある。しかし、生産年齢人口が減っているのは、人口の減少だけが原因ではない。同じ年齢の人口の中で、働いている人の比率が下がっているからでもある。このことは、失業率の上昇に現れている。失業率が上昇している中で、無理やり投資をして機械化することは良いのだろうか。

 現在、失業率が低下しているが、投資減税がなければ、機械ではなく人に頼り、失業率がさらに順調に低下していくのではないか。失業率が低下すれば、いずれ賃金は上昇する。そうなると、企業は機械化投資をするはずである。人為的な政策で投資を伸ばすよりも、労働と機械の自然な代替メカニズムに任せた方が良いのではないか。

 無理やり投資を増大させることが必ず正しいとは言えない。現在すでに、投資と研究開発に関する様々な減税措置や補助金の制度がある。効率が低いのは、これらの政策のためかもしれない。企業がどれだけ投資と研究開発に対する支出をするかと言えば、税引き後の利益が、借入利子率に対して十分に高いと考える水準までだろう。奨励策があれば、これらの支出を水準を超えて過大に増やすことになる。さらに、一時的な奨励策は景気変動を大きくするリスクがある。エコポイント、エコカー補助金がいたずらに需要を変動させたことは記憶に新しい。労働を増減させて需要に応じて生産量を調整することが難しい日本では、需要変動のコストは大きい。

一般的増税には一般的減税で対応

 政治家も役人も、裁量的な政策が好きだ。投資減税や研究開発減税とは、特定の投資や研究開発に減税するのである。しかし、特定の種類の投資や研究開発が優れていると、政府が判断できるとは思えない。むしろ、一般的な減税の方が良いのではないか。法人税の減税は一般的な減税である。

 法人税を減税しても内部留保にしておいて資金として使わないから駄目であるという議論があるが、減税措置があるからと投資に使った結果が、成長率の低さなのではないか。内部留保が無駄というが、企業にしてみれば、パナソニックやシャープのように、潤沢に資金を積み上げていた企業が一挙に危機に陥るのを見れば、持っていたいと思うのは当然であろう。内部留保があるから無駄だとは言えない。

 法人税減税には、日本の法人の7割が赤字なのだから効果がないとか、企業優遇であるなどという批判もある。しかし、7割の法人が赤字にしているのは、法人税が高いからである。法人税を下げれば、無理に費用を積み上げたりしないで税金を払ってくれるだろう。赤字法人が多いということは、なおさら法人税を引き下げた方が良いということである。企業優遇というが、法人税は、誰が負担しているか分からない税だ。企業は、法人税を払うために、製品価格を引き上げたり、賃金を引き下げたりしているのかもしれない。その分消費者や労働者が負担を強いられているかもしれないのである。

 さらに重要なのは、法人税が企業の新たな参入を損なうことである。企業が高い税率を嫌って日本での投資を減らせば、日本の雇用が減少し、高い法人税の帰結を国内の労働者が負担することになる。消費税という一般的な増税の景気悪化効果を軽減したいのであれば、法人税減税のような一般的な減税で対応するのが筋ではないか。

◆WEDGE2013年11月号より










 

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