バイデン政権は、米国の自制と軍備管理で対処できると考えている。2022年にハリス副大統領は対衛星兵器について、米国による一方的実験禁止を発表した。
不幸にも、米国の衛星はサイズが大きく、攻撃に対して脆弱だ。米軍関係者はこのことを以前から知っており、米国の現在の戦略は分散と強化であるという。これには資金が必要だ。
戦略家たちが長年予測してきたように、宇宙は既に軍事競争の次の段階に進んでおり、つまり新たな戦闘上の有利を提供する領域になっている。これからの問題は、米国が宇宙の覇権を敵に譲るのか、それとも他の軍事戦域と同じように自らが覇権を確保するのかということだ。
宇宙戦争に関しては政治指導層の間に自己満足的な態度が見られる。米国エリート層は、新しい軍事技術についての米国の弱さを国民に説明するのを拒否している。バイデン政権のリベラルな国際主義者たちは、自分たちの政権下で増大する脅威を強調したくないので、条約で対処できると主張している。
共和党の孤立主義派は、防衛費を削減し、世界の影響力圏をロシア、中国、イランに明け渡したいと考えているようにさえ見える。こうした夢遊病者たちを目覚めさせようと努力してくれたマイク・ターナー委員長に感謝する。
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海外へも基地を確保する中国
上記の記事は、ロシアの動きと共に中国の宇宙開発についても、その勢いの良さを強調している。過去数年間、中国は米国と肩を並べるほどに、一年間に衛星を宇宙空間に配備するロケットを年間40機も打ち上げている。年によっては米国を上回る数である。ロシアも30機ほど打ち上げているが、わが国は高々4機ほどに留まる。
地球の周りを既に1万を超える衛星が秒速8キロを超える速度で縦横に周回しており、広大無辺の空間といえども衝突の可能性が出始めている。米国は世界中に30地点余りの地上基地を設け、コンピューターを駆使して、それらの位置、速度、方向、重量などを把握し、衝突回避のために情報を提供している。無論、国防上の情報の収集もその目的である。
高速で移動する衛星と地上の間の通信を頻繁に行うには、地上の多くの地点に地上局を設置する必要がある。通信に限らず、測位航法、地球観測などいずれをとっても、精度の高いデータを収集・提供・確保するには、出来るだけ多くの地点に地上局を置く必要がある。地球上の多様な場所(極地、赤道近傍など)に拡散して数多くの地上局を設置するのが、衛星情報の正確性を高めるのに効率的だ。