2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年3月19日

 2024年2月27日付のウォールストリート・ジャーナル紙は、ロシアの脅威と米国への不安から、ドイツにおいて米国に頼らない欧州独自の核抑止力の議論とともに、核保有についての議論が起こっていることを指摘するBertrand Benoit(同紙ドイツ支局長)による解説記事を掲載している。

ドイツのオラフ・ショルツ首相(AP/アフロ)

 ロシアの拡張主義と米国が欧州から手を引く恐れから、ドイツにおいて、核兵器を持つべきかという、かつては考えられなかった議論が起こっている。最近、ドイツ政府関係者は、欧州の核保有国である英仏両国に対し、米国が北大西洋条約機構(NATO)のための核抑止の役割を果たさなくなる場合の代替策をドイツとともに検討するよう求めた。また、一部政治家や研究者は、ドイツも自らの核戦力を持つべきかを論じ始めている。

 ドイツのリントナー蔵相は、独有力紙への寄稿で、「フランスと英国はそれぞれの戦略能力を欧州の集団安全保障のために維持し拡張しようとするだろうか。逆に、われわれはそのためにどれだけの貢献をする用意があるだろうか」と問題提起をした。

 ショルツ首相はじめ独外相と防衛相は、仏英と核兵器協力を拡大させることに懐疑的である。ロシアの核脅威は増しているものの、NATOの現在の核抑止戦略に依拠するとともに、防空システムの改善に取り組むことが最善の対応と考えている。

 ドイツは核兵器を保有していないが、NATOの核共有の仕組みの下、ドイツの戦闘機はドイツに配備された米国の核兵器を発射できるよう装備されている。ドイツは、長年NATOの核抑止は米国の核兵器を中心にしたものであるべきだとの立場を取ってきた。ドイツがフランスの核の傘に入る動きを見せれば、米国が欧州における軍事プレゼンスを減じることが懸念されるからである。


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