「中学まで野球をやってきたので柔道とかラグビーとか、別のスポーツをやってみたいと思っていました。当時の僕は身長が175cm、体重が50kg程度しかないので、痩せていることがコンプレックスでした。だから選手が防具をつけてがっしりとしたイメージのあるアメリカンフットボールがカッコ良かったんです。仮入部のときに監督から、また来いよと声を掛けられたことで入る決心がつきました」
防具を付けて当たってみると日常では絶対に味わえない感触に驚いた。あの一瞬で完全に嵌った。僕には野球よりも合っていたんでしょうねと振り返る。
試合に出られるようになったのは高校3年生から。それまではルールやフォーメーションがよくわかっていなかったのである。
「1年生の時に先輩がルールやフォーメーションの説明会を開いてくれたのですが、聞こえないので内容がよくわからなかったんです。そのわからないことも上手く伝えられず、何度も聞くことにも抵抗があって、わからないままに時間が過ぎてしまいました」
勉強家の奥寺がルールやフォーメーションを理解できないはずがない。しかし、コミュニケーションに大きな壁があったのである。
3年生で掴んだポジションはディフェンスの「ラインバッカー」だ。ハードタックルが一番のアピールポイントとなるポジションである。相手チームのフォーメーションを読んで完全に仕留める。その武器が冷静な判断力と熱い心とハードなタックルなのである。
「声が聞こえない僕にはオフェンスは難しい。そのかわりディフェンスは相手チームが来たら潰せばいいし、ボールを持っている相手をタックルすればいい。本当はアタマを使うポジションなんですが、わかっていなかった僕はとにかく突っ込め! と教わりましたので、その通りに(笑)」
目標は日本一になることだった。しかし、全国大会の準決勝で夢敗れて引退。早稲田大学でも続けようと決めた。
フォーメーションの丸暗記で応用きかず
しかし……「大学はレベルが全然違って、ミーティングの内容がちんぷんかんぷんなんです(笑)」