芝生の上の人間劇
ゴルフは「メンタルのスポーツ」である。だからこそ出てしまう人間性を見事に描ききっているのが本書だ。負けず嫌いの社長がやってしまう悪い癖、ダメだと分かっているのに「卵を生む」ことを止められない社長……。こんな人、本当にいるのかとも思うが、バンカーとして長年日本の企業社会を見てきた筆者のことだ。こんな現場に遭遇したことがあるのかもしれない。そんな理不尽な場面に直面した時にどんな立ち振る舞いをするべきか、そのヒントも与えてくれる。
密航から始まる時代の記録
日本と朝鮮、さらには北と南の間に境界線が引かれた朝鮮半島を、正式に、あるいは密航により渡った尹紫遠とその家族の人生を追ったノンフィクションである。その移動の様子や、第二次世界大戦の混乱により離ればなれになってしまった家族の話、また日本で開業した洗濯店の話は、尹が出版した書籍やその仕事の合間に書かれた日記から紡がれる。尹の子どもたちの話も興味深く、当時の民族問題や性的役割、時代によって移り変わる戸籍や帰化の状況も垣間見える。
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全都道府県で人口が減少――。昨年7月の総務省による発表に衝撃が走った。特に地方においては、さらなる人口減少・高齢化は避けられない。高度経済成長期から半世紀。人口減少や財政難、激甚化する災害などに直面する令和において、さまざまな分野の「昭和型」システムを維持し続けることはもはや限界である。では、「令和型」にふさわしいあり方とは何か――。そのヒントを探るべく、小誌取材班は岩手、神奈川、岐阜、三重、滋賀、島根、熊本の7県を訪ね、先駆者たちの取り組みを取材し、「小さくても生きられる社会」を実現するにはどのようなことが必要なのかを探った。