芝生の上の人間劇
ゴルフは「メンタルのスポーツ」である。だからこそ出てしまう人間性を見事に描ききっているのが本書だ。負けず嫌いの社長がやってしまう悪い癖、ダメだと分かっているのに「卵を生む」ことを止められない社長……。こんな人、本当にいるのかとも思うが、バンカーとして長年日本の企業社会を見てきた筆者のことだ。こんな現場に遭遇したことがあるのかもしれない。そんな理不尽な場面に直面した時にどんな立ち振る舞いをするべきか、そのヒントも与えてくれる。
密航から始まる時代の記録
日本と朝鮮、さらには北と南の間に境界線が引かれた朝鮮半島を、正式に、あるいは密航により渡った尹紫遠とその家族の人生を追ったノンフィクションである。その移動の様子や、第二次世界大戦の混乱により離ればなれになってしまった家族の話、また日本で開業した洗濯店の話は、尹が出版した書籍やその仕事の合間に書かれた日記から紡がれる。尹の子どもたちの話も興味深く、当時の民族問題や性的役割、時代によって移り変わる戸籍や帰化の状況も垣間見える。