2024年11月22日(金)

経済の常識 VS 政策の非常識

2024年4月9日

 その後も支給され続けているので、最終的に10兆円を超えるのではないか。10兆円なら、1.27億人の国民一人当たりでは7.3万円になる。国民に直接現金を配った方がCO2排出量は増えないだろう。

 さらに本欄「ガソリン補助金は問題大ありの政策である経済的理由」で指摘したように、この補助金はガソリン価格の低下とともに石油元売各社の利益増加にもなっている可能性がある。会計検査院も、ガソリン補助金の「支給に相当する額が小売価格に反映されていない可能性がある」とする調査結果を23年11月7日公表している(「ガソリン補助金、小売価格の抑制効果に疑問 検査院調査」日本経済新聞23年11月7日)。

 円安は確かに輸入物価を上げるが、円高になればうまくいくという訳でもない。08年リーマンショック後の1ドル79円にもなった円高は、日本経済に壊滅的打撃を与えた。少しの円高、150円が145円になるぐらいなら大したことにはならないという方もいるだろうが、少しなら物価を下げる効果も少しである。

やはり必要なのは、GDPを上げること

 良い経済政策の判断は、とりあえず、最終的に1人当たりの実質国内総生産(GDP)が伸びるかどうかである。少し前には、GDPが上がるのが良くない、問題は経済ではない、という人もいたが、世界の先進国の中で、日本だけが、生活水準を表す1人当たり実質購買力平価GDPも実質賃金も増加しない。先進国の中で最下位に近く、台湾、韓国に追い抜かされていると知った上で、問題は経済ではないという人は今やいないだろう(購買力平価の国際比較などの事実については、原田泰『日本人の賃金を上げる唯一の方法』(PHP新書、2024年)第1章にある)。

 1人当たりGDPが増えても分配が悪化すればダメだというのは分かるが、GDPが増えなければ賃金も増えない。GDPとはすべての労働所得と資本所得と減価償却費を足したものだからだ。

 資本の取り分は100%以上にはならないし、一般に30%ぐらいのものであまり変わらない。したがって労働の取り分は70%だ。資本の取り分をゼロにすれば新たな実物投資も研究開発投資もできない。したがってGDPが増えない限り、賃金も上がらない。


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