GDPは政府が邪魔しなければ増える
ではどうしたらGDPが増えるのか。それはあらゆるところで効率的になることである。 そのためには、政府が、経済が効率的になることを邪魔しないことである。
例えば、運転手が不足しているなら、ライドシェア(米国のウーバーのように一般ドライバーが乗客を運ぶサービス)を解禁すれば良いのに、政府はこれを禁止してきた。しかし、ドライバーの人手不足によって、過疎地や観光地での解禁の動きが生まれ、さらには全国的に解禁しようという動きが盛んになった。
途中、国土交通省は、新たに過疎地などでの個人タクシーの営業を認め、これまで75歳だった運転手の年齢上限を80歳とするなどした。筆者は、80歳のタクシー運転手より普通のドライバーに運転してもらった方が安全だと思うが、政府はそうは考えないようだ。
さらには、外国人人材にタクシー運転手になってもらうというアイデアもある。確かに、ニューヨークの運転手は外国人労働者が多い。ただ、これは碁盤目の道だからできることで、日本の道では外国人は無理だろうと思っていたが、地図アプリの発達で、外国人でもタクシー運転手になれるだろう。
技術の進歩が、タクシー運転手の技能を外国人に開放したということだ。菅義偉前首相や河野太郎規制改革相、自民党の一部、維新や都市・地方もライドシェアの規制緩和を求めていた。
結局、タクシー業界の反対で、タクシー会社が管理するライドシェアが24年4月に解禁されることになった。また、さらに解禁するかどうかを24年6月までに判断するとのことである(「「ライドシェア」24年4月に限定解禁 全面導入に業界抵抗」日本経済新聞2023年12月20日))。
要するに、タクシー業界が、ウーバー類似のアプリと運転手の管理をすることになりそうで、何も変わらないのではないか。稼働していない自家用車と隙間時間を使って所得を増やし、GDPを増やし、タクシー不足に悩む消費者の利益を増進するという本来の目的がどこかに行ってしまった。
GDPというすべての所得を足したものを増やせばよいと、まず単純に考えればこんな議論の迷走は防げたのではないか。