2024年4月26日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年11月20日

 「きょうから3中総会が始まる。われわれは幹部の腐敗を訴えるため全国から自発的に集まった」。監察省前で山東省から来た陳情者はこう語った。

国家安全委員会は「中国版KGB」

 底層にいる庶民は、幹部の腐敗が深刻化し、公正な司法でこれを裁けない政治・社会システムに不満を爆発させている。習も腐敗で「共産党も国家も滅びる」と繰り返し、危機感を募らせている。

 習が宣言した国家安全委も「中国版NSC」との見方が出ているが、どちらかと言うと「中国版KGB」ではないか、という観測が強い。KGBとは、冷戦時代に情報機関・秘密警察として絶大な権限を誇った旧ソ連の国家保安委員会のことである。

 中国の国家安全委は、外交・安保色よりも公安・国家安全色の強い機関というわけだ。つまり「対外政策」より「国内統治」を念頭に置いている。トップの主任には習が、副主任には公安・司法、テロ対策を統括する孟建柱・党政法委員会書記らが就く予定で、下に設置される弁公室の秘書長には傅政華公安次官(北京市公安局長)が就任するとの見方が浮上している。

「集権」強める習主席

 北京の著名人権活動家・胡佳氏は国家安全委員会創設によって「中国は『警察大国』から『警察帝国』になった」と警戒感を露わにし、こう語った。

 「国内の圧力はどんどん高まり、習近平は強力かつ暴力的な手段で抑え付けている。力で安定を維持する『維穏』はエスカレートしている。国家安全委員会はKGBより権力も規模も大きくなる。『政法委員会』を巨大化させたものだ」

 習近平指導部が発足して以降、体制に異を唱えるなどして拘束された人権派の活動家や弁護士、記者らは既に200人以上に達し、その数はどんどん膨らんでいる。指導部は3中総会で「全面的な改革深化」を打ち出したが、その裏で政治的な引き締めを強めており、「たった1年で胡錦濤前政権後半5年間の拘束者を大きく超えた」(人権活動家)とされている。

 習指導部は「政左経右」(改革は経済が中心で、政治は引き締め)がより鮮明になっており、「政治面ではさらに集権を強め、経済面では既得利益集団を微調整するだけにとどまる」という人権派弁護士・唐吉田氏の解説は的を射ている。

 人権派弁護士の劉暁原氏も「国家安全委員会は国内での引き締めを強めるためのものだ」と解説した。


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