「尖閣」対立も国家安全リスクか
3中総会の結果を一言で言い表せば、習近平への「集権体制」確立ではないか。「二重の圧力に直面している」と表現した習の心中は、「二重どころではない」危機意識にさいなまれており、共産党トップである自身にすべての権力を持たせることで危機を乗り切ろうとしているのだ。
そして国家安全委創設が「急務」になった時代の変化に対し、国内の安全と対外的な安全が密接にリンクする時代が到来したという強い認識を持っている。
党幹部養成機関・中央党校の機関紙「学習時報」(11月18日)は、「わが国の国家安全を守る『力』が政府や軍の各部門に分散し、権威のある国家級の安全指導体制が整っていない。これでは迅速な対応は困難だ」と指摘。「領土主権、大災害、テロ攻撃などに有効に対処し、国家安全に対する脅威対応能力を増強させなければならない」と訴えた。
同紙はまた、インターネット技術の進歩を挙げ、「情報活動と安全問題は過去と異なる特徴を呈している」としてサイバー攻撃やネット情報も、リスク要因として挙げている。
同紙はこうも指摘した。「わが国の周辺、特に海上の安全問題が直面する現実的な脅威は上昇の趨勢にある」。これは尖閣諸島などを念頭に置いたものだ。尖閣諸島をめぐる日本との対立も、国家安全を脅かすリスクととらえ、国家級の協調体制が必要と見ている表れである。
「周辺外交工作座談会」で
対日関係について長時間議論
では、日本は国家安全を脅かす「危機」なのか。決してそうでないところに、習近平が対日政策で頭を痛める要因がある。
10月24~25日に開かれた「周辺外交工作座談会」は「新中国建国以来、初めて開かれた極めて重要な会議だ」と解説するのは中国外務省関係者だ。この関係者はこう続ける。
「国境を接する14カ国、海でつながる6カ国、ASEANなど重要な9カ国の計29カ国の大使が出席した。習氏は周辺外交のフレーズとして『親』『誠』『恵』『容』の4文字を掲げた」
「親密」「誠意」「互恵」「寛容」という意味だ。また座談会にはこのほか、国有企業や金融機関の首脳も出席し、経済交流も重要性も説いた。
この座談会を伝えた国営新華社通信などには一切、対日関係について議論したことには言及していない。しかし中国政府筋は「対日関係をどうするか、最も時間を掛けて討議され、政治局常務委員7人の最も関心の高い問題だった」と明かした。