「今の対立状態が続くことは双方にとって不利益」
複数の中国政府筋によれば、座談会では習近平からは「対日」に関してこうした指示が出されたという。
「今の対立状態が続くことは中日双方にとって不利益だ」
「日本との関係は、周辺外交の中で最も重要な一つだ」
「経済、文化、人的交流を拡大しなければならない」
国家安全委員会創設の経緯から見ても、尖閣問題が中国にとって譲れない「核心的利益」である原則には変化はない。周辺外交工作座談会では尖閣問題を解決する努力を続けると同時に、経済・民間交流を拡大させる方針を示したものだ。
複数の中国外交筋によると、中国政府は最近、尖閣の領有権に関して日本側に対して「お互いの立場が異なる」ことを認めるよう求めている。尖閣諸島をめぐる領土問題は存在しないという立場の日本政府は拒否しているが、領土問題や係争の存在を認めるよう迫った頃と比べて柔軟化してきているとの見方は日本側にもある。
中国政府は、今夏頃までは日本政府の(1)領土の係争があることを認めない、(2)(過去の日中指導者が合意したと中国が主張する)領有権「棚上げ」を認めない、(3)領土問題の対話に応じない-という基本的立場を「三つのノー」と反発を強めていたが、最近ではこの主張も影を潜めている。
鈍くなった「海警」の動き
10月初めには中国外務省で対日政策を統括する熊波アジア局副局長が日本を極秘裏に訪問し、日本外務省高官らと尖閣問題の打開に向けて協議を行った。
時事通信が10月15日にこれを報じた直後、中国外務省の華春瑩副報道局長は翌16日の記者会見で「具体的な報道の状況は私が知る限り存在しない」と全面否定したが、11月12日には新華社記者が同じ質問を行ったところ、秦剛報道局長は「中日双方は一貫して接触を保持している」と事実上認めた。
単に最初に答えた華春瑩が事情を知らなかっただけなのか、中国高官がわざわざ日本まで足を運んで尖閣問題を協議したことが国内で明らかになると、「弱腰外交」への批判が集中すると懸念したのか、定かではない。