2024年5月1日(水)

BBC News

2024年4月18日

カタールのムハンマド・ビン・アブドルラフマン・アール・サーニ首相は17日、同国の、イスラエルとイスラム組織ハマスの仲介役としての役割を再検討していると発言した。

カタールは、エジプトやアメリカと共に、イスラエルとハマスの間の紛争で、停戦とイスラエルの人質解放に向けた交渉において重要な役割を担ってきた。

しかしムハンマド首相は、カタール政府は利用され、悪用され、その努力は政治的得点を得ようとする人々によって損われていると述べた。

また、現在の和平交渉は「微妙な段階」にあると述べた。

停戦を確保しようとする試みは繊細で、ほとんど失敗に終わっている。しかし、カタールはハマスとの緊密な関係を含め、すべての関係者とつながりがあるため、何らかの突破口を開くには極めて重要な存在とみなされている。

仲介役らは6週間の停戦を提案し、その間にハマスが40人の女性や子ども、高齢者や病気の人質を解放することを提案した。しかしハマスは先週末、この提案を公式に拒否した。

カタールは現在、この協議が成功する可能性を公然と疑問視しており、仲介者としての役割を再検討しているという。

「調停が悪用されている」とカタール

ムハンマド首相は、カタールの努力は、得点を稼ごうとする政治家たちによって損なわれていると指摘。ドーハでの記者会見で、「残念なことに、私たちはこの調停が悪用されているのをみている。狭い政治的利益のためにこの調停が悪用されている」と語った。

「そのため、カタールは仲介役としての役割の包括的な評価を求めている。我々は今、調停を評価し、また当事者がこの調停にどのように関与するかを評価する段階にある」

ムハンマド氏は個人を名指ししなかったが、アメリカの連邦議会からは、カタールがハマスに譲歩するよう十分な圧力をかけていないと批判する声も出ている。アメリカは週末、停戦提案を公に拒否したハマスを「停戦の障害」だと非難した。

イスラエルとイランの間で緊張が高まり、パレスチナ自治区ガザ地区での紛争がより広い地域紛争にエスカレートするのではないかという新たな懸念が高まるなか、ムハンマド首相は紛争の拡大に警告を発し、より広い国際社会が責任を負い、戦争を止めるよう呼びかけた。

現在の紛争は、昨年10月7日にハマスがイスラエルを襲撃して始まった。ハマスの襲撃では約1200人が殺され、253人が人質としてガザ地区に連れ去られた。

一方、ハマスが運営するガザ地区の保健省によると、その後イスラエルが開始した軍事作戦ではこれまでに女性や子供を中心に3万3800人以上が殺害された。

昨年11月に実現した1週間の停戦では、女性や子供など105人の人質が解放された。また、イスラエルで収監されていたパレスチナ人240人が釈放された。

イスラエル当局は、戦争以前に捕らえられた人も含めて133人がなお、ガザ地区で人質になっているとしている。しかし、うち30人以上が死亡したとしている。

ハマスは13日、イスラエルとの「真剣かつ真実の 」人質交換取引に合意する用意はあるが、現在の交渉のテーブル上にあるものは拒否すると述べた。

また、イスラエル軍のガザからの完全撤退と、避難民であるパレスチナ人の帰還につながる恒久的な停戦の要求を堅持するとあらためて強調した。

一方、イスラエルの情報機関モサドは14日、ハマスの姿勢について、ガザ地区での指導者ヤヒヤ・シンワル氏が「人道的な取り決めや人質の返還を望んでおらず、イランとの緊張を利用し続け、各セクターを団結させ、地域全般にエスカレーションをもたらそうとしている」ことを示していると述べた。モサドの長官は、イスラエル側の交渉役を務めている。

米国務省のマシュー・ミラー報道官は15日、 「ハマスはこの取引に応じる必要があり、なぜ応じないのかを世界とパレスチナ国民に説明する必要がある」と述べた。

米メディアは先週、イスラエル政府高官の話として、ハマス側は仲介役に対し、最新の停戦提案に示された基準の一つ(子ども、兵士を含む女性、50歳以上の男性、重篤な病状のある人)を満たす人質が40人も生存していないと伝えたと話した。

一方、ハマスの高官は、人質全員の居場所を突き止めるための「十分な時間と安全」を確保するには停戦が必要だと述べた。

人道支援の動きは

カタールのモハメド首相はまた、国際社会に「責任を負い、この戦争を止める」よう要請。ガザの市民が「包囲と飢餓」に直面し、援助が「政治的恐喝の道具」として使われていると警告した。

3月に発表され、国連が確認している評価によると、ガザの人口の半数に当たる110万人が深刻な飢餓に直面しているほか、北部では飢饉が差し迫っている。国連は、イスラエルによる援助物資の輸送制限、継続する敵対行為、秩序の崩壊を非難している。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は17日、「ガザの飢饉に関する国際機関の主張を否定」すると発言した。また、イスラエルは「人道分野でそれ以上のことをしている」と主張した。

イスラエル軍も、イスラエルのアシュドッド・コンテナ港から初めて、食料援助がガザに入ったと発表した。17日には、世界食糧計画(WFP)のトラック8台が、イスラエルが支配するケレム・シャローム検問所からガザ南部に小麦粉を輸送した。

先週には、ガザ北部への新しい検問所も開放された。人道支援活動を行っていた慈善団体「ワールド・セントラル・キッチン(WCK)」の職員7人が、イスラエルの攻撃によって死亡した事件を受け、イスラエルがジョー・バイデン米大統領の要請にこたえた格好だ。

バイデン大統領は17日にソーシャルメディアに、「ネタニヤフ首相との会談後の12日間で、ガザには食料や物資を積んだトラック3000台が入った。前の州と比べると50%増加している」と投稿した。

しかし、ガザ最大の援助機関である国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は16日、「ガザに入る人道物資の量に大きな変化はなく、北部へのアクセスも改善されていない」との報告書を発表した。

UNRWAの資料によると、バイデン氏とネタニヤフ氏が会談した4月5日から直近の15日までの間に、ケレム・シャローム検問所とエジプトが管理しているラファ検問所からガザに入ったトラックは1日平均185台だった。3月29日から4月4日までの平均は168台だった。

国連人道問題調整事務所(OCHA)のアンドレア・デ・ドメニコ事務局長は16日、イスラエルとの援助物資輸送の連携が多少改善されたとはいえ、飢饉を防ぐのに苦労していると述べた。

「これは単に小麦粉を運んでパンを焼くよりもはるかに大きな問題で、本当に複雑だ」、「飢饉を防ぐには、水、衛生、健康が基本だ」と、同事務局長は指摘した。

一方、イスラエルの占領地政府活動調整官組織(COGAT)は、ケレム・シャローム検問所のパレスチナ側では、700台分の物資が回収されるのを待っていると主張。「我々は能力を増強した。国連は言い訳ばかりしていた」と述べた。

難民キャンプへの攻撃

イスラエル軍は17日、地上部隊と航空機がガザ中心部で「多数のテロリストを排除し、テロリストのインフラを破壊した」と発表した。

パレスチナのメディアは、ヌセイラート難民キャンプとその周辺で激しい砲撃と戦闘があったと報じた。また、16日には民家への空爆で一家11人が殺されたと伝えている。

イスラエル軍はまた、北部ベイト・ハヌーンで「学校に潜伏しているテロリストを逮捕するため」の急襲を行ったと述べた。作戦では、多くのハマスとパレスチナ・イスラム聖戦の活動家が拘束され、抵抗した他の者は殺害されたと付け加えた。

国連によると、16日にベイト・ハヌーンの家屋が攻撃され、大きな被害を受け、4人が死亡したと報告されている。

(英語記事 Israel Gaza war: Qatar reassessing its role in ceasefire talks

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/crgyjkkvzejo


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