米国とその同盟国は、中国が抑制的な行動を取るように、中国に対するアプローチをより前向きのものに切り替えるべきである。米中間において、一方で中国の台湾に関わるミサイル能力、水陸両用能力の展開の限度について、他方で米国が台湾に供与する武器のレベルと種類についての限度について、信頼できる相互保証を確保するよう取り組んでいくべきである。
中国との間で、サイバー攻撃、シーレーンの防衛、大量破壊兵器の拡散などの分野で安全保障面での協力を進めるべきであり、気候変動や新たな感染症の発生の防止のためによりよい協力をすべきである。
当然のことながら、中国も果たすべき役割がある。結局のところ、中国は、米国と同様に、この地域における危機と紛争を避けたいと考えている。そうであれば、米国とその同盟国がより協力的なアプローチを取ることに対し、強圧的な行動を穏健化することで応えるべきである。
これらは容易ではないが、新たな思考と新たな外交努力によって、中国がそれに応えるよう誘因を与えるべきであるし、少なくともそれを試みるべきである。軍事的抑止のみではうまくいかない。中国と協力する道を探すべきである。
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まず行動を改めるべきは中国
米国の政治は二極分化しているものの、中国に対する強硬論には超党派的な支持があるとよく言われる。上記の論説は、そうした中、中国に対して「前向きのアプローチ」を取るべきという議論である。米国の論壇では、少数意見と言うことになろう。
筆者であるモチヅキもスウェインも米国ではよく知られた東アジア専門家であるが、議論の立て方の根本のところに強い違和感を覚えざるを得ない論説である。モチヅキとスウェインは、米国が日本とともに中国の現状変更的行動に対して安全保障のネットワークを重層化させることで対応しようとしていることを「危険なゲーム」と批判している。
それに対し、中国が軍事力をさらに増強し、領土的主張のための行動を激化させ、ロシアとの軍事協力を推進する。その結果、アジア太平洋地域のさらなる分断、軍拡競争につながり、紛争のリスクが高まるとの主張である。
誰が問題を作っているかを度外視して、それへの対応策を「緊張を煽る」「リスクを高める」と批判するのは、転倒した議論である。こうした議論は、日本でも往々にして見られる。