2024年12月15日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年5月23日

 4月24日付けNYT紙が、米国の著名な東アジア研究家専門家であるマイク・モチヅキとマイケル・スウェインが、4月24日付けニューヨークタイムズ紙掲載の論説‘A Dangerous Game is Underway in Asia’で、岸田文雄首相訪米の際の日米比の枠組みを含めて米国が東アジアにおいて同盟ネットワークの重層化を図っていることを批判し、中国に対して「前向きのアプローチ」を取るべきである、と主張している。概要は次の通り。

(Tanaonte/gettyimages)

 中国の最近の活動はもちろん懸念すべきものである。しかし、米国が防衛能力の向上、共同訓練の増加、インテリジェンスの共有、防衛装備品の生産と技術面での協力、軍事作戦の調整の強化などによって、この地域の安全保障上の結びつきを重層化させることは危険なゲームである。

 それによって中国はアジア太平洋地域で軍事力を使用することに慎重になるかもしれないが、新たな同盟構造は、それ自体で地域の平和と安定を保障するものではなく、かえって紛争が起こるリスクを高めるものである。

 4月の岸田首相訪米の際の米日比のパートナーシップ、すでにある米日豪印による「クアッド」、豪英米による「AUKUS」、米日韓国の協力などは、中国から見ると、アジア版北大西洋条約機構(NATO)を築こうとする米国主導の動きと見えるだろう。もちろん、いずれをとっても、NATO第五条のように、一カ国に対する攻撃は全加盟国への攻撃と規定する集団的防衛条約ではないが、中国は、自らの利益を脅かすものと見るであろう。

 中国の反応は明らかではないが、軍事力を拡大し、領土的主張のための実力部隊の使用を強化し、ロシアとの軍事協力をさらに推進するであろう。その結果、アジア太平洋地域はさらに分断され、さらに危険な地域となり、軍拡競争が進む。

 ふとした政治的・軍事的出来事から地域戦争が勃発する可能性が高まる。そうした悪夢を防ぐためには、軍事的抑止を強化することに加えて、中国との間の外交にもっと力を入れる必要がある。

 米国と日本などの主要同盟国は、中国との間で、外交・安全保障関係機関間で危機を回避し、管理するための対話を設ける必要がある。米国と日本は台湾海峡における緊張を高める行動を避ける必要がある。


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