米国のバイデン政権が貿易・経済政策面で中国に対するタカ派的姿勢を強めつつある。国民の間に広がる対中警戒感を意識したものだが、一方で「米中冷戦」のエスカレートは望んでおらず、デリケートな”政経分離外交“を模索中だ。
強める中国経済への一手
バイデン大統領は去る4月17日、大統領選の結果を左右する接戦州のひとつペンシルベニア州ピッツバーグを訪れ、全米鉄鋼労働組合(USW)本部ビルでの演説で「中国は国内需要以上の鉄を生産し、わが国などにダンピングして売りさばいている」として、中国製鉄鋼・アルミ製品に対する制裁関税を現行の7.5%から約3倍の20%超に引き上げる方針を明らかにした。
すでに米通商代表部(USTR)に対し、税率を3倍にする具体的な対象品目や引き上げ時期などを検討するよう指示したという。
トランプ共和党大統領候補は、大統領に返り咲いた場合、すべての対中国製品に60%課税の意向(ワシントン・ポスト紙報道)が伝えられており、バイデン大統領もこの点で、国内保護主義ムードの流れに相乗りしたかたちとなっている。
さらに同大統領は、同月24日、中国の世界的ビデオ・ストリーミング・アプリで知られる「TikTok」全面禁止措置を盛り込んだ関連法案に正式署名した。
中国の巨大IT企業バイトダンスが所有する「TikTok」については、メッセージやビデオ画像を手軽にやり取りできる使い勝手のいいアプリとして世界中で爆発的人気を博し、米国でも若者を中心に1億7000万人が利用、政界では「国家安全保障上の脅威」になりうるとして警戒感が高まってきていた。
成立した関連法は、バイトダンスに対し、「TikTok」を「1年以内」の期限付きで売却を義務付けており、もし応じなければ、米国内での使用禁止措置を講じるとしている。