トランプ前政権との“違い”
さらに、バイデン政権の中国に対する見解そのものが、トランプ時代と大きく異なっているとする指摘もある。
米「ブルッキングズ研究所」は、「バイデン、トランプは対中貿易とどう取り組もうしているのか」と題する最近の論文の中で、両者の相違点について次のように指摘している:
「中国をライバル視するという点では、両者は共通の立場にある。しかし、対中競争力をいかに強化するかについては、視点は異なる。トランプ氏は、中国側を譲歩させるためもっぱら関税引き上げという保護主義的アプローチを志向してきた。その中には、米国製品輸出を拡大し貿易赤字を縮小させる目的で、中国からの事業撤退を諸外国に強要するといった諸策も含まれる。これに対し、バイデン氏は同盟諸国に呼びかけ、米国への投資拡大に協力してもらうことによって中国優位性と対抗していくことをめざしている」
「バイデン大統領は就任以来、前政権が『対中貿易収支不均衡』に過度にとらわれるあまり、国内競争力問題へのビジョンを欠いていたことを指摘してきた。行き過ぎた対中関税措置が結果的に国内農家、製造業、消費者を痛めつけてきたことを批判すると同時に、それに代わって、同盟、友好諸国との連帯の下で、中国側の問題の多いビジネス、経済活動に共同対処し、米国競争力向上を働きかけてきた。その具体的成果は、G7先進国首脳会議グループ、日米豪印4か国会議、米英豪AUKUS同盟、日米韓連携などの一連の協議の結果に反映されてきた」
「ハイテク分野でもバイデン政権は、主たるステークホールダ―である諸国と連携し、効果的な対中輸出規制に乗り出した。その特記すべき一例として挙げられるのが、日本とオランダ両国による半導体製造分野での共同対中規制措置だ。両国は米国とともに、半導体製造にかかわる重要技術を持っており、中国はこれらを止められた場合、先端半導体製造の国際競争面で大きく後れを取ることになる」
「さらに、同盟・友好諸国との共同歩調の下に、対中“ディリスキング”(de-risking)にも取り組んできた。これは中国側の恣意的行動で西側経済が揺さぶられるリスク軽減を意図したものであり、米国経済の健全な発展のために、重要物資サプライチェーンの対中依存を回避し、国内生産の能力向上と中国以外の関係国とのサプライチェーン構築に取り組むことなどが含まれている……同時に、米国および同盟諸国の安全保障を脅かす中国軍部による米国軍事技術へのアクセスにも厳重な歯止めをかける考えである」