11月の米大統領選挙に向け、台湾統一の機をうかがう中国・習近平体制はバイデン、トランプ両候補のどちらの当選を望むのか――。内外専門家の間では、米インテリジェンスの分析まで交えさまざまな議論が始まっている。
「アメリカ・ファースト」の間隙を狙う
今のところ、もっともらしく語られているのが、“トランプ待望論”だ。
その最大の理由は、習近平体制による「2027年台湾武力併合」の見方が米国内にあり、台湾防衛に消極的なトランプ氏が勝利し、次期米政権(25~29年)がスタートすれば、絶交のタイミングを迎えるからだとされる。
実際にトランプ氏はこれまで、大統領在任中含め、台湾に対する武器供与、防衛コミットメントにはどちらかと言えば後ろ向きの言動が目立っていた。
昨年7月、「Fox News」テレビのインタビューで「中国が台湾侵攻を開始した場合、大統領として台湾を防衛するか」との質問に対し、明言を避けた上で「わが国の半導体産業は台湾に奪われてしまった」として台湾への不満をにじませた。
今年に入ってからも、同様の質問に対し、「台湾を防衛するかどうかを明確にすると相手(中国)を利することになる」として、態度を明らかにしておらず、安全保障を重視する共和党上院議員たちの間からも批判といら立ちが高まりつつあった。
さらに、中国政府で台湾問題を取り扱う当局スポークスマンも去る1月末、「(トランプ氏が返り咲き)米国がアメリカ・ファースト政策を打ち出すことになれば、台湾は見捨てられてしまうだろう」とコメントしたことは、習近平体制のトランプ氏に対する”期待感“の表れとの見方もある。
逆に、バイデン大統領は就任以来、「台湾危機の際には米軍を投入し、台湾を守る」と公言してきた。