2024年7月16日(火)

バイデンのアメリカ

2024年5月13日

 これに対し、中国政府当局は同社に対し、「TikTok」の対米売却ではなく、むしろ米国内市場からの撤退を期待しているという(米ウォールストリート・ジャーナル紙)。しかし、その後も、バイデン政権による中国製電気自動車(EV)への制裁関税4倍引き上げ意向(同紙)が伝えられるなど、米中貿易戦争の今後の新たな火種となる可能性をはらんでいる。

バイデンが打ってきた対中規制措置

 バイデン政権のこれまでの対中政策は、貿易・経済面に関する限り、トランプ前政権当時に劣らずタカ派色に彩られてきた。

 通商面では、高度半導体などの対中輸出制限、軍事転用可能な高度技術への中国側のアクセス拒否などを通じ、テクノロジー面での絶対優位性を維持するため、中国の技術革新にさえブレーキをかけようとしてきた。

 基本的には、トランプ前政権時代からの規制措置の追認が少なくないが、バイデン政権発足以来、新たに打ち出された主な対中規制措置として以下のようなものがある:

① 「国防権限法2021」に基づく同盟国・友好国間との「多国間半導体セキュリティ基金」の設立と、規制や半導体儀鬱の対中輸出許可方針の共通化(2021年1月)

② 米国内の重要鉱物の採掘や電池の生産能力向上を促し、エネルギー安全保障確保を盛り込んだ「インフレ抑制法」の成立(同年1月)

③ 医薬品、半導体、蓄電池、レアアースの4品目からなる「重要物資」関連技術確保とサプライチェーンの強化を目的とした大統領令(21年2月)

④ 米通商代表部が、トランプ前政権時代に打ち出された対中追加関税にについて「当面維持」の方針を発表(21年3月)

⑤ 先端半導体やスパコンに付随する技術や部品の対中規制強化(22年10月)

⑥ 中国大手半導体企業の半導体製品・サービスを含む電子製品・部品・サービスの米国政府による調達禁止を盛り込んだ22年12月施行の「国防権限法」成立

 こうした流れを受けて、米メディアの間では一時、「バイデン政権は、貿易を通じた『対中関与』により関係拡大を図るという過去数十年来の米政府の基本路線を一変させた」との見方が広がった。

 政治サイト「Politico」も22年12月26日付けの特集号で、以下のように論じた:

 「トランプ前政権下で国家経済会議副議長を務めたクリート・ウィレムズ氏も『今われわれは対中関係におけるある大きな変化(a sea change)を目の前にしつつある』と語っている通り、バイデン政権は中国固有のイノベーションそれ自体を国家安全保障上の脅威とみなしており、従来の米政府の基本アプローチから大きく踏み出したものに他ならない。商務省はすでに中国による高度コンピューター半導体生産能力を阻止するために、新たに一連の措置を打ち出しているほか、米ハイテク企業による対中投資活動を規制する行政命令を出し、さらに米国民からの情報収集を封鎖する目的で中国アプリTikTok禁止を画策している」

 「これらの動きはすべて、バイデン政権が掲げてきた米企業競争力を向上させる“プロモーション・キャンペーン”の一環をなすものであり、『インフレ抑制法』による半導体国内メーカーに対する何十億ドルもの助成金支出、米企業の中国半導体メーカー事業参加規制なども含まれる。いわば、『保護』と『促進』を同時進行させようとしている……過去の歴代政権当局者たちは、中国側の技術発展を米国より何世代か後塵を拝する程度にとどめることで満足してきたが、今やその発展を、とくに半導体、コンピューターなどのハイテク分野において“停止状態”に導くことを目標としつつある」


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