Wedge REPORT

2013年12月13日

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 澁谷武彦社長は、地域の家々を回るうち、家から数十メートルの距離でさえ動けない人たちがこんなにいるのか、と驚いた。「玄関まで伺わなければ、事業をやる意味がないと感じました」。

移動スーパーで買い物をする高齢者。施設で食事は満たされているが、選ぶ楽しみは何物にも代えがたい (撮影:編集部)

 大多数の同業者が公民館など、特定の地点に人を集めて販売を行う中、訪問希望があった約50軒を戸別に回るルートを作り、呼び鈴を押して販売するスタイルが定まった。

 常連の80代夫婦は「必要なものがあっても我慢しとったけど、軒先まで来てもらえるで、今は雨や雪の日でも好きなものが買える」「欲しいものを頼むと、すぐ積んできてくれて助かる」と笑顔を見せる。

 当初は主に高齢者の利用を想定していたが、自営業で店を空けられないなど、様々な事情から外出できない人も想像以上に多く、事業開始から1年足らずで客単価は2.5倍に、訪問先は5倍まで伸びた。無理しながらの奉仕に陥らず、しくみの工夫で社会貢献活動に儲けの芽を見出している。

潜在価値を可視化し

値下げ競争から脱却

 固定店舗でも安定経営を続けるスーパーもある。愛知県豊橋市の「一期家一笑」は、大きめのコンビニ程度(約80坪)の売場面積しかない個人経営スーパーだが、近隣1キロ圏内にスーパー1店、コンビニ4店がひしめく中でも、これまで一貫して黒字経営を達成している。

 店内で目をひくのが、所狭しと貼られたPOP。一期家のスタッフと並んだ生産者の笑顔が印象的だ。

 一期家のスタッフは、普段から自治会や地域イベントに積極的に参加している。学校行事の前日にはお弁当に入れやすい惣菜やお寿司を用意するなど、そこでのコミュニケーションを品揃えに活かしている。店頭でも、消費量の少ない独居の高齢者には包装を開けてバラ売りし、食べたいおかずを聞けば翌日には店頭に並べる。対応は迅速で個別具体的だ。小規模経営の特性を活かし、顧客一人ひとりを尊重する接客は、お年寄りを中心に多くの固定ファンを獲得している。

 その姿勢は生産者に対しても貫かれている。地元の農家や卸業者からの仕入れにこだわり、彼らのもとに足を運んでは、生産過程を直接見聞きして確認する。

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