マーチャンは民主主義の擁護者になれるのか?
トランプ前大統領は不法移民について「わが国の血を汚す」と、アドルフ・ヒトラーを想起させる言葉を使用した。移民であるマーチャン判事を侮辱する言葉である。かん口令違反に加えて、マーチャン判事はトランプ前大統領の差別的発言に対しても、かなり心証を悪くしていることは確かだ。
マーチャン判事はトランプ前大統領を、少数民族に対して寛容ではなく、ルールを破る権威主義的なリーダーとして捉えているのではないだろうか。前で紹介した米公共ラジオ、公共放送およびマリスト大学の全国共同世論調査では、「米国人は事態を正常な状態にするために、ルールを破るリーダーが必要か」という質問に対して、共和党支持者の56%が「必要」と答えた。共和党支持者は、トランプ前大統領を念頭に回答したかもしれない。
この調査結果を見たリベラル色が強い米紙ニューヨーク・タイムズの中で、保守派コラムニストとして知られるデイビッド・ブルックス氏は、「リーダーがルールを破ると権威主義者になる」と警告を発した。4件で訴追され、1件で有罪評決を受けたトランプ前大統領の行動ーー特に、前回の大統領選挙結果を覆そうとした行動は、明らかに民主主義的なルールを破る行動である。
トランプ前大統領は、今回の元不倫相手に対する口止め料を巡る裁判を含め、「裁判は魔女狩りだ」と主張している。マーチャン判事は7月11日に、「本物の魔女」を狩り、民主主義を擁護する決意を示すのではないだろうか。