2024年11月22日(金)

2024年米大統領選挙への道

2024年6月13日

 2024年米大統領選挙は11月5日の投開票日まで、4カ月を切った。現地5月30日のトランプ有罪評決後のジョー・バイデン米大統領とドナルド・トランプ前大統領との支持率を見る限り、バイデン氏にとって評決がゲームチェンジャーになっているとは言い難い。目下のところ、ファン・マーチャン判事が7月11日にトランプ前大統領に言い渡す量刑に注目が集まっている。

 では、マーチャン判事はどのように量刑を捉えているのだろうか。トランプ前大統領は、どのような対策を講じて、マーチャン判事が自分に不利な量刑を下すのを阻もうとしているのか。また、この事件に対する量刑の内容ばかりでなく、一連の裁判プロセスを通じて、マーチャン判事はトランプ氏の発言や行動をどのようにみているのか。そもそも彼は、どのような人物なのか。まず、その生い立ちからみていこう。

有罪評決を聞くトランプ氏(手前)と、マーチャン判事(奥)(REUTERS/AFLO)

マーチャンとは一体何者か?

 マーチャン判事は、1962年(一説には63年)にコロンビアの首都ボゴタで生まれた。6歳のときに米国に渡り、ニューヨーク市クイーンズ区で育った移民だ。

 9歳から食品や雑貨類を運ぶ仕事を始めてチップを稼ぎ、学費のために高校と大学時代は皿洗いをし、夜間はホテルのマネジャーとして働いたという。ニューヨーク市立大学バルーク・カレッジで経営学の、ホフストラ大学(東部ニューヨーク州)で法学の学位を取得した。

 同じクイーンズ区の富裕層の家庭で過ごしたトランプ前大統領とは、極めて対照的な人生を送ってきたことが分かる。

 マーチャン判事の判例で注目すべきは、2023年トランプ前大統領と一族が経営するトランプ・オーガニゼーションのアレン・ワイセルバーグ元最高財務責任者(CFO)に対して、脱税などの罪で禁固5カ月の実刑判決を言い渡し、ワイセルバーグ氏を収監したことである。当時、ワイセルバーグ氏は75歳であった。

 ちなみに、米国とメキシコの「国境の壁」建設費を、クラウドファンディングを通じて集め、その金を私的に使用した件で、トランプ前大統領の側近であったスティーブ・バノン元首席戦略官を、今年9月から始まる裁判で裁くのもマーチャン判事となる予定である。

 トランプ前大統領は6月14日に78歳の誕生日を迎えるが、8月に77歳になるワイセルバーグ氏と年齢の差はさほどない。となると、マーチャン判事は、トランプ氏が高齢であることだけを理由に禁固刑を言い渡さないということはない。

 残りの論点は、初犯であること――初めての悪事、あるいは悪事が初めて明るみに出て、裁判にかけられたのだとしても、またはトランプ前大統領が主張しているように無実であったとしても、現在の立場は初犯である。初犯と前大統領であったという2点が考量の要素となる。

世論は収監の可能性をどうみているのか?

 トランプ前大統領は、収監されるのだろうか。間違いなく、選挙の行方を左右する要因の一つである。一般の国民が「収監」に影響を与える訳ではないが、世論調査がどのような結果を出したのか簡単にみてみよう。

 英誌エコノミストと調査会社ユーガブの全国共同世論調査(24年6月2~4日実施)によれば、44%が「収監されない」、23%が「決して収監されない」と回答し、合計で67%がトランプ氏の収監の可能性が低いという考えを示した。党派別では、民主党支持者68%、無党派層63%、共和党支持者70%(いずれも「されない」と「決してされない」の合計)であった。

 トランプ前大統領は34の訴因(重罪)全てで、有罪となった。ニューヨーク州は重罪(felony)をランクA~Eに分類しており、トランプ前大統領の業務記録改ざんは、最も罪の軽いEに属する。ランクEでは、通常最短1年以上から最長5年以下の禁固刑が言い渡される。

 では、トランプ前大統領の量刑はどうなるのか。単純に罪を足すと禁固136年になるが、米有力紙ワシントン・ポストは、罪をまとめて最短16カ月から最長4年間と報じている。


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