2024年12月22日(日)

2024年米大統領選挙への道

2024年5月28日

 ドナルド・トランプ前大統領の不倫相手であった元ポルノ女優に対する口止め料の業務記録改ざんを巡る裁判は、検察側と弁護側の22人(検察側証人20人 弁護側証人2人)による証人尋問と反対尋問が終了し、5月28日にニューヨーク州地裁で最終弁論が行われる。その後、12人の陪審員は討議に入る。陪審員が評決を下すためには、全員一致が求められる。1人でも反対すれば、評決は不能となる。

 有罪評決か、それとも評決不能か。評決後、トランプ前大統領とジョー・バイデン大統領は、どのような選挙対策を講じるのだろうかーー。

(BackyardProduction/gettimages)

トランプに対する忠誠心

 これまで指摘してきたように、トランプ前大統領は裁判を選挙戦略の中に組み入れ、裁判所を選挙キャンペーンの「場」に変えて、異例のキャンペーンを展開した。例えば、裁判所の廊下で、記者団を前に裁判は偽りで、バイデン大統領による魔女狩りであると繰り返し訴えて、「裁判を信じるな」というメッセージを支持者に発信した。

 また、トランプ前大統領は米紙ニューヨーク・タイムズの全国世論調査結果を紹介し、激戦州でバイデン大統領をリードしていると強い口調で述べた。移民問題、インフレ、イスラエル・ガザ戦争および米大学のキャンパスにおけるイスラエルに対する抗議運動にも言及し、それらはバイデン大統領の無能さだと断定して強く非難した。

 さらに、トランプ前大統領は印刷物を片手に裁判所の廊下に現れ、法律を専門とする学者や弁護士、保守的なメディア関係者のコメントを読み上げた。もちろん、それらのコメントは全てトランプ前大統領を擁護するものであった。

 その際、念入りな演出がなされた。トランプ前大統領を応援するために、ニューヨーク州地裁に駆けつけた連邦上院議員、下院議員および知事等が、同前大統領の後に立って、トランプ支持のメッセージを送ったのだ。

 加えて、彼らは裁判所の外で記者会見を開いて、裁判の正当性の欠如を強調した。その中には、マイク・ジョンソン下院議長の姿もあった。ジョンソン下院議長は、検察側の最重要証人で、トランプ前大統領の顧問弁護士であったマイケル・コーエン氏を「嘘をつく信頼できない人物」とレッテルを貼り、彼の信頼性を傷つける発言をした。過去にコーエン氏は、米連邦議会で偽証をしたからだ。

 トランプ前大統領と共和党予備選挙を戦ったダグ・バーガム知事(中西部ノースダコタ州)と実業家のビベック・ラマスワミ氏とバイロン・ドナルズ下院議員(共和党・南部フロリダ州)の3人は、トランプ前大統領が好んでする白色のワイシャツに赤いネクタイを締めて、記者団の前に現れた。服装という非言語メッセージを使って、トランプ支持のメッセージを送ったのだ。

 ラマスワミ氏とドナルズ氏は、トランプ氏の不倫口止め料を巡る裁判を裁くファン・マーチャン判事の娘が、民主党のために政治献金を集めていると批判して、同判事が民主党の判事であると示して見せた。裁判が民主党主導の裁判であって、党派的であるという印象を米国民に与える狙いがあった。

 バーガム知事やラマスワミ氏は、第2次トランプ政権で閣僚を狙っている節がある。裁判所に姿を現したJ・D・バンス上院議員(共和党・中西部オハイオ州)は、副大統領候補の1人と言われている。彼らが、ニューヨーク州地裁に足を運んだ主たる理由は、トランプ前大統領に対して忠誠心を示し、第2次トランプ政権でポストを得ることであると言える。


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