2024年12月21日(土)

Wedge REPORT

2013年12月26日

 そのうえ、オバマ政権と連邦議会は今後10年間で国防費を最大1兆ドル削減する方針を示しており、同盟国と友好国の双方に対して米国政府が軍事的責務を果たせるのかその能力が問われている。

 しかし、アジアほど、オバマ政権がその政策を遂行できていないことが明白な地域はない。オバマ政権はここ何年も、外交政策の最重要イニシアティブは、いわゆる「アジアへのピボット(アジア回帰)」だと主張してきた。大統領と当時のヒラリー・クリントン国務長官は、イラクとアフガニスタンでの戦争が終わった後に米国が焦点を移す地域はアジアだと断言してきた。

 だが、鳴り物入りでこの政策が発表されてから数年しか経たない今、世界各地で続く問題と米国内の諸問題の犠牲となり、ピボットは終わってしまったように見える。

内実が伴わない米国のアジア回帰

 ピボットに対する最大の批判は、最初から修辞的な政策だったということだ。事実、アジアにおける米国の政策が実際に大きく変わったと思えることは一度としてなかった。オバマ政権にとって、ピボットは単なる軍事的な強化を意味するのではなく、「政府全体」のアプローチ、つまり経済と外交のイニシアティブだということであった。

 ピボットの1つ目の要素は経済であるが、もっぱら環太平洋経済連携協定(TPP)の自由貿易交渉を軸とする。TPPの目的の1つは、経済において国有企業が担える役割を制限することであり、自由市場経済だけが加盟できる協定と見なされている。これはアジアでリベラルな価値観を広める助けになると考えられている。

 2つ目の要素は外交だ。オバマ政権は発足直後に、ジョージ・W・ブッシュ政権の「無視」の時代の終わりと、アジア回帰を強調した。クリントン国務長官は数回アジアを歴訪し、他の政府高官もたびたび同地域を訪問した。中でも特に目を引いたのは、オバマ大統領が米国大統領として初めて、2011年、12年の東アジア首脳会議に出席したことだ。

 しかし、多くの観測筋とブッシュ政権の元高官らが指摘するように、実は米国は一度もアジアを離れたことがない。対テロ戦争における日米間の緊密な協力と、ブッシュ前大統領の下で特に米国とインドが築いた新たな関係を考えると、米国が不在だったとは言えない。逆に対日関係においては、オバマ大統領が就任して日本の民主党が09年に政権を取った後、日米関係は悪化した。

 3つ目の要素は、最も重要な米国の軍事的プレゼンスだ。オバマ政権はアジアにおける米国の軍事態勢について、若干の変更しか発表していない。これにより、多くの批判派はそもそもピボットが修辞的なものに過ぎないと主張してきたのだ。


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