東シナ海上に防空識別圏を設定し、アジアの空に緊張を走らせた中国。こうした中国の強硬姿勢を招いた一因は、就任1期目にアジア回帰を打ち出しながら、中国への配慮から、アジアにおける軍事的プレゼンスの強化を怠り、政治的意思を示さず、政治的・軍事的影響力を落としてきたオバマ政権にある。米国における日本・アジア研究の第一人者が鳴らす、オバマ外交政策への警鐘。
内政問題で窮地に立つオバマ
オバマ政権の2期目は国内問題により悪夢と化した。「オバマケア」として知られる医療保険制度改革の失敗が全米でニュースの見出しを独占し、ワシントンのエネルギーをすべて使い果たしてしまった。加えて、依然弱い景気回復と、連邦政府の債務上限引き上げをめぐる政治闘争により、米国の政治は記憶している限り最も党派色が強いものになり、著しい機能障害を起こしている。
このため米国民は自国の政治指導者たちに大きな不満を抱いている。バラク・オバマ大統領の仕事ぶりを評価する人は40%を上回るかどうかという水準で、国民の過半数が大統領を信頼できないと考えている。米国連邦議会は大統領以上に不評を買っており、最近の世論調査では、議会に対し好意的な意見を持つ人はわずか9%にとどまった。
このような政治の機能不全は米国の外交政策にも悪影響を及ぼす。オバマ政権はイスラム過激派の拡大を食い止められず、むしろ中東での米国の影響力を台無しにしたとの懸念が高まっている。シリアの独裁者バシャル・アサド大統領が自国民に対して化学兵器を使用したことについては、オバマ大統領は弱腰で支離滅裂な対応を試みたと批判された。
また、オバマ政権はイランの核開発計画をめぐる交渉に関し、明確な戦略を持っているということを共和党、民主党双方の反対派に対して納得させられずにいる。一方、ロシアは、シリア危機において仲介役を買って出て、米国の大半の外交政策に反対する姿勢を明確にし、かつてないほど強く、自信に満ちている。