2024年12月21日(土)

Wedge REPORT

2013年12月26日

強硬姿勢強める中国「防空識別圏」設定

 こうしたピボットに対する軍事的憂慮が、13年11月下旬に浮き彫りになった。中国が東シナ海に新たな「防空識別圏」の設定を宣言したからだ。中国の防空圏は日本および韓国のそれと重複している。中国政府は、軍用機、民間機を問わず、すべての航空機に、中国当局に事前通告し、飛行計画を提出することを求めた。これは北東アジアの空を支配し、尖閣諸島に対する日本の施政権を脅かそうとするあからさまな試みに映る。

中国国防部のウェブサイト上に掲載された、中国が東シナ海上に防空識別圏を引いた地図(提供・AP/アフロ)

 中国政府はおそらく、上空での自国の利益を主張することをそう簡単にあきらめないだろう。米軍の縮小は、中国のそうした行動を一層煽るだけだ。

 アジア諸国内の米国の同盟国、友好国にとって最大の懸念は、こうして中国が強硬姿勢を強めるなか、米国政府が引き続き中国政府との戦略的な関係構築を話題にしていることだ。その一方で、中国政府が一段と影響力を強め、近隣諸国を威嚇しようとする熱意ばかりが伝わってくる。こうした態度は、継続的な地域の安定にとって不穏な動きである。

 さらに、冒頭でも述べたワシントンの政治的な機能不全が米国によるアジアへのピボットを損ねている。13年10月、オバマ大統領は予定していた東南アジア諸国連合(ASEAN)年次会合と東アジア首脳会議への出席をキャンセル。多くの人はこれに対し、オバマ大統領は国内問題と国外問題の双方をさばけず、大統領が国内で存在感を維持するためにアジアを犠牲にしようとしているサインだと解釈した。

 一方で、オバマ大統領がASEANの会合を欠席したことにより、習近平国家主席が得をしたと皆の目に映った。習主席は大々的に報じられた東南アジア歴訪をこなし、アジア太平洋経済協力会議(APEC)会合でスポットライトを浴びる前に、マレーシアおよびインドネシアと包括的な戦略的パートナーシップ関係の構築で合意した。


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