日中対立に関しては、従来、中国寄り、あるいは、中立的な論調をとってきた、ニューヨーク・タイムズとフィナンシャル・タイムズが、11月25日付社説で、中国による東シナ海への防空識別圏の設定を非難しています。
まず、ニューヨーク・タイムズは、安倍政権の対中政策を国家主義的であると非難しつつも、目下最も不穏なのは中国の振る舞いである、と述べています。
すなわち、中国による東シナ海への防空識別圏の設定は、尖閣の平和的解決を望む、との主張に反するものであり、緊張を高め、日本との直接的摩擦の可能性を高めるものである。
1年以上にわたる、中国と日本の間での、尖閣問題をめぐる対立の激化は、もっぱら、安倍総理率いる日本の超国家主義政権が扇動してきたが、中国も沿岸警備艇や航空機を、日本が領有権を主張している領域に送り込んで、不安定さを増大させてきた。防空識別圏の設定は、日本の支配に対して、さらに強く挑むものである。それは、習近平の中国と関係を構築しようとする米国の努力を著しく困難にさせる。
米国は、尖閣への日本の施政権を認める一方、領有権の主張に関しては特定の態度をとらず、全ての関係国に対して紛争の平和的解決を求めてきた。しかし、安倍総理は、中国に対する、過激な言葉と攻撃的態度をとる、国家主義的外交政策をとってきた。それは、日米にとって危険なものであり得る。オバマ政権は、安倍政権に、中国との緊張を高める愚かな政策をとらせることなく、日本の国益を守る方策を見出さねばならない。
しかし、現在、最も不穏であるのは中国の振る舞いである。中国当局は、将来、防空識別圏を更に拡大する可能性を残している。対立が深まるにつれ、誤算の可能性は高まる。中国の行為は、習近平がオバマとの会談の際に言った「新しい大国同士の関係」についても、新たな疑問を生じさせている、と述べています。
一方、フィナンシャル・タイムズは、島への領有権の主張如何にかかわらず、中国の行為は危険で愚かなものであり、無責任なゲームである、と厳しく批判しています。