世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年12月24日

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 一方、フィナンシャル・タイムズの論調は、尖閣問題に関しては、従来、日本と中国を中立的立場で扱ってきましたが、今回の社説では、中国による防空識別圏の設定を「威嚇により現状を変更する試みである」と強く非難しており、日本としては歓迎できます。おそらくは、日本側の広報活動が所期の成果を収めつつある兆候かもしれなせん。

 中国による防空識別圏の設定は、図らずも、日中いずれが現状の破壊を目指しているかを明確にしたと言えます。その意味では、中国は大きな失策を犯したと言うべきでしょう。

 中国政府部内に、誰かが防空識別圏設定のようなアイディアを出した場合、対日姿勢が「軟弱」であるという批判を避けるためには、何人もこれに反対出来ないような雰囲気があることは、容易に想像出来ます。

 国際調停又は司法的解決は、残されているほぼ唯一の平和的解決策ですが、日本としては、他に譲歩するものがあまりないだけに、その扱いには慎重を要すると思います。日本側は、紛争は存在しないが、中国側が敢えて提起するならば、受けて立つ用意がある、という所までは譲歩する必要はあるでしょう。そして、中国側の国内事情が、「日本が法的解決を認めたことは紛争の存在を認めたことであり、中国側の勝利である」と宣言して、国際調停や国際司法裁判所に委ねることで幕引きを許すような状況になっていることが必要です。そうした時期が熟すことがあるかどうかは、中国の国内事情次第です。

 それまでは、防空識別圏の問題で中国があとに引くことは考えられません。領土問題で中国が今までに引き下がったことはありません。西沙群島では、フランスの植民地統治が終わった途端にその東部を占領し、20年経って、米軍のベトナム撤兵後その西部を占領し、その後十数年を経てソ連艦隊がカムラン湾から撤収したのを見て南沙群島を占領しています。その間一切話し合いにも応じず、一歩も譲っていません。その間、武力衝突も辞さない姿勢を貫いています。また、最初は漁船、次いで船着き場、やがては軍隊と一歩ずつ前に進んでいます。今回も、防空識別圏の設定による一触即発の状況を10年でも20年でも続ける可能性は十分あるものと、覚悟する必要があるでしょう。

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