2024年4月20日(土)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年12月18日

 中国の防空識別圏設定に対する日米の共同声明が期待されていた12月3日、安倍・バイデン共同記者発表は一部の日本人を失望させたかもしれない。まず、開始時刻が予定より大幅に遅れた。発表に際して、双方の事務方は表現のすり合わせを行うが、双方の考え方に相違があった可能性もある。また、記者発表という、共同声明より拘束力の弱い形式で発表されたこともそれを示唆している。

日米で異なるスタンス?

バイデン米副大統領が来日、安倍首相と会談し共同記者会見に臨んだが… (写真:ロイター/アフロ)

 実際の発表もまた、双方の認識の差を印象付けた。安倍首相の談話が、バイデン米副大統領の談話に比べて非常に短かったのだ。更に突っ込んだ表現をしたかった安倍首相が、言いたいことを言わせてもらえなかったと感じた人も多かっただろう。事前に報道されていた「ADIZ設定の撤回を求める」といった文言も含まれていなかった。

 バイデン副大統領は、中国のADIZ設定を指して「緊張を高める」と非難し、「一方的な現状変更の試みは許さない」と米国の意図を示した。こうした緊張を高める行動が「誤解に基づく不測の事態の生起」を招くとし、誤解による不測の事態は、意図して起こされる事態より危険だとも述べている。

 しかし、バイデンが、不測の事態を避けるために必要だとしたのは、中国に対する強硬姿勢ではなく、「緊張緩和」である。そのために「危機管理メカニズムの構築と有効なコミュニケーション」が必要だと述べたのだ。

 更に明確に米国の見解を示したのは、12月4日のヘーゲル国防長官とデンプシー統合参謀本部議長の記者会見だった。ヘーゲル国防長官は、ADIZ自体は問題ではないと明言し、撤回を求める日本とは異なるスタンスを示した。問題は、事前に周辺国等に何の相談もなく突然設定したことにあると言う。デンプシー統合参謀本部議長も、ADIZ自体が事態を混乱させるのではないとした上で、当該空域を通過する航空機にもADIZ進入の報告を義務付けることが混乱を招いているとした。


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