2024年11月22日(金)

ベストセラーで読むアメリカ

2009年4月30日

 さらに、CEOの地位にあることでついてくる特権や地位、高額な報酬などを捨てることは非常に大変なことだと強調する。若いうちにお金を貯めて早めにリタイアするという選択をせずに、経営トップまで上り詰めたCEOたちはまさに、CEOという地位にいること自体を愛している。それだけに、心の準備が大切だという。次のような一節にはわれわれ平社員も反論できない。

 Most people believe, “With all of that money, I wouldn’t have any trouble letting go of work. I would just have a great time hanging out at the beach for the rest of my life!” It is easy to image letting go of what you never had. It is hard to let go of what you do have. (P25)

 「大抵の人は次のように思っている。『あんなにお金を持ってるなら、自分だったら仕事なんかすぐに辞めてやる。残りの人生をビーチでぶらぶらして楽しく過ごすんだ!』一度も手にしていないものを手放すことを想像するのは簡単だ。しかし、実際に手にしているものを手放すのは難しい」

CEOを退いたら会長の地位にもとどまるな

 では、引退に向けた心構えができたら、どうやって後継者を選ぶべきか? 社内の生え抜きがいいのか、著名な経営者を外部から迎え入れるのがいいのか? 後継者を決めたら本人にはいつ伝えるべきか? 経験豊富な筆者ならではの示唆に富むアドバイスが続く。

 ちなみに、アメリカでは社外から経営トップを招く例がメディアでは報じられることが多いが、意外にも筆者は事情が許すなら、社内から後継者を選ぶことを薦めている。本書の後半ではさらに、バトンを渡すことを決めた候補者に対し、CEOになるための研修をどのように施すべきかなどを具体的に解説している。リーダーシップの継承を明確にするため、CEOを辞めたら会長の地位にとどまることもするなと、日本の経営者には耳の痛い警告も出てくる。社長交代が最近目立つ日本企業の経営者にこそ読んでもらいたい一冊だ。

 本書の半ばに、次のような一節があることも見逃せない。

 As of this writing, recent meltdowns in the financial markets exposed how clearly unprepared several of the world’s leading banks were for CEO succession. (P44)

 「本書の執筆中、最近の金融マーケットの崩壊によって、世界有数の銀行でもCEOの後継者問題では明らかに準備不足であることが分かった」


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