■今回の一冊■
SUCCESSION: Are You Ready?
著者Marshall Goldsmith, 出版Harvard Business Press, $18.00
コーチングの神様が語る、引き際の極意
「CEOへの覚書」(MEMO TO THE CEO)シリーズの1つとして出版した本書は経営トップに向けて、後継者の選び方やその教育の仕方などを伝授する。筆者のマーシャル・ゴールドスミスは、企業経営者に対しリーダーとして適切な物言いや振る舞い方などを指導する「エグゼクティブ・コーチ」の第一人者。
米国で100人を超える著名CEOのコーチを担当した実績があるほか、世界的なベストセラーとなった「コーチングの神様が教える『できる人』の法則」(日本経済新聞出版社)という著書も持つ。コーチングの第一人者だけあって本書の語り口は平易でとても読みやすい英語だ。全部で110ページと薄い本なので気楽に読める。
ウォールストリート・ジャーナル
週間ベストセラーランキング・ビジネス書部門
第4位(3月下旬)
本書の最大の特徴は、会社の戦略といったレベルではなく、引退を控えた経営トップの感情レベルから、理想的な引き際の在り方を説き起こす点にある。筆者はまず、猛烈に働いてきたであろうCEOたちに対し、少しスローダウンして引退後の生活に向け準備をするように諭す。
You have been working almost continuously for years. For better or worse, your family has been able to survive without you at home. Don’t delude yourself into believing that they really want you around all of the time. If you are married, this may be your spouse’s greatest nightmare! (P9)
「あなたは長年にわたりほぼ絶え間なく働いてきた。好むと好まざるとにかかわらず、家族はあなたが家にいないことに慣れてしまっている。家族があなたにいつもそばにいて欲しいと思っているなんて幻想を抱いてはいけない。もしあなたが結婚しているなら、相方にとってそんなことはとんでもない悪夢となりかねません!」
会社のトップになっていなくても、日本の猛烈サラリーマンたちにとっても耳の痛い一節だ。だから、CEOの座を去ることを決意したら、少し家に早めに帰ったり、孫が出る野球の試合を見に行くようにしたりして、引退後の家族生活に備えよと、筆者はアドバイスする。通常の経営書ではなかなかお目にかかれない助言だが、数多くの経営者をみてきた筆者の言葉だけに、妙に説得力がある。