2024年7月28日(日)

BBC News

2024年7月28日

イスラエル占領下のゴラン高原にあるサッカー場で27日、ロケット砲が着弾し、12人の子供や若者が殺害され、数十人が負傷した。イスラエル当局が発表した。

イスラエル国防軍(IDF)によると、レバノンに拠点を置くイスラム教シーア派組織ヒズボラが発射したロケット砲が、ドゥルーズ派の多く住むマジダル・シャムス村のサッカー場に着弾した。

イスラエルのこの主張を、ヒズボラは否定している。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ヒズボラが「重い代償を払う」ことになると報復を約束した。

イスラエルとヒズボラは、昨年10月にガザでの戦争が始まって以来、互いに攻撃を頻繁に繰り返している。今回の攻撃が、全面的な戦争の発端にならないか懸念されている。

ガザでの戦争が開始されて以来、イスラエルの北側国境で一度に多数が死傷した事案としては今回の攻撃が最大規模。

国連は声明で、「想像を絶する大惨事に中東全域を巻き込む」事態へと紛争が拡大する危険があると警告し、すべての当事者に「最大限の自制」を求めた。

ヒズボラの報道官モハマド・アフィフ氏は、今回の攻撃への関与を否定。ヒズボラが国連に対して、今回の爆発はイスラエルの迎撃ロケット砲によるものだと主張したとされることについて、BBCは確認しようとしている。

イスラエル当局によると、砲撃の犠牲者はいずれも10歳から20歳の間。イスラエルのメディアは、10歳よりも幼い子供も殺害されたと伝えている。

検証済みの動画では、サッカー場に大勢が集まり、担架が救急車に運び込まれる様子が移っている。

マジダル・シャムスはゴラン高原に四つある集落の一つで、アラビア語を話すドゥルーズ派の住民約2万5000人が暮らす。

今回の砲撃の被害規模が明らかになる前、ヒズボラは他の4件の攻撃について自分たちによるものと認めていた。

そのうちひとつの攻撃は、レバノンとイスラエルの間の国境沿いに位置するヘルモン山の斜面にある軍事施設を標的にしたものだった。この軍事施設は、マジダル・シャムス村のサッカー場から約3キロ離れている。

IDFのダニエル・ハガリ報道官は攻撃現場を訪れ、ヒズボラがうそをついていると非難した。報道官によると、サッカー場に着弾したロケット砲はイラン製の「ファラク1」で、「ヒズボラだけが独占的に使っている」のだという。

「我々の得ている情報は、はっきりしている。ヒズボラが罪のない子供たちを殺害した」と報道官は述べ、イスラエルは反撃する用意があると強調した。

イスラエルとヒズボラは頻繁に互いを攻撃しあうが、どちらもレバノン南部での戦争拡大につながるような軍事行動はこれまで控えていた。

アメリカ訪問中のネタニヤフ首相は、予定を早めて帰国の途に就いた。

イスラエルのドゥルーズ派を代表するシェイク・モワファク・タリフ氏は、「恐ろしい攻撃」が「超えてはならないすべての一線を超えた」と強く非難した。

「まともな国家なら、自国の市民や住民にたえず危害が加えられるなど、容認できないはずだ。北部コミュニティーにとってはこれが過去9カ月間、続いてきた現実だ」とも、タリフ氏は述べた。

レバノン政府も異例の声明を出し、「あらゆる民間人に対するあらゆる暴力や侵略の行為を非難し、すべての前線において武力行為をただちに停止するよう呼びかける」とした。

「民間人を標的にすることは、国際法にはなはだしく違反するものであり、人道の原理原則に背くものだ」とも、レバノン政府は強調した。

アメリカや欧州連合(EU)も、今回の攻撃を非難している。

ドゥルーズ派の多くは、イスラエル北部やレバノン、ヨルダン、シリアに住んでいる。イスラエルでは、人口の1.5%にあたり、全面的な市民権を持っている。

イスラエルが1981年にシリアからゴラン高原を併合した際、イスラエルはドゥルーズ派にイスラエル市民権を提供したが、全員がそれを受け入れたわけではない。

ゴラン高原のドゥルーズ派はイスラエルで学び働くことはできるが、投票権は市民に限られている。

ドゥルーズ派の男性には兵役があり、IDFではユダヤ系を除くと、ドゥルーズ派が集団として最も大きい。

国際社会の大半は、イスラエルによるゴラン高原併合を認めていない。

(英語記事 Children dead in attack on football pitch in Golan Heights

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c2lk7gj153yo


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