日本では日本海呼称問題に対する関心は薄いが、韓国では竹島問題と不可分の関係にある。独島が日本海の中にあると、独島は日本の領海内にあるようで適切ではない。それに国際水路局がガイドライン『大洋と海の境界』に日本海と表記した1929年、朝鮮半島は日本の植民統治下にあり、韓国側の呼称である東海を主張できなかったというのである。
韓国側が先鋭化するのは、島根県議会が「竹島の日」条例を制定する直前、盧武鉉大統領(当時)が「東北アジアの平和のための正しい歴史定立企画団」の設置を指示し、それが06年9月、「東北アジア歴史財団」と改組して、日本海呼称問題を重点課題としてからである。08年1月には日本海呼称問題・慰安婦問題・靖国問題等の動画資料を作製して国内外に頒布し、日本を侵略国家とすることで、竹島の領有権を主張する日本を封印しようとしたのである。
これは李明博大統領になっても変わりがない。08年7月、学習指導要領の解説書に竹島問題が記述されると「独島研究所」を新設し、国会内には「独島領土守護対策特別委員会」が発足した。韓国側は竹島問題を領土問題と認識し、国策によるプロパガンダを続けているからである。
だが、日本政府の対応は対照的である。韓国に竹島を侵略されて半世紀、日本は無為に過ごした。今日の日本は領土を侵略され、国家主権が侵されてもその自覚がなく、呼称問題でも既成事実を着々と積み上げる韓国側の動きに対して危機感がない。しかも、韓国政府の国際世論工作で「日本は侵略国家」との認識が蔓延する中、日本政府が多額の国費をODAに拠出しても、国際貢献が過去の贖罪と評価される危険性もある。
日本では竹島問題は外務省の北東アジア課が担当し、日本海呼称問題は海上保安庁が専管する。竹島問題や日本海呼称問題は、縦割り行政の中で迷走し、国家としての基本戦略が確立していない。それを象徴しているのが、「海洋基本法」の制定である。国連の海洋法条約の発効で竹島問題解決の糸口をつかんだが、「海洋基本法」では海洋資源の開発に重きを置き、領土問題の解決には機能しないからである。国策として領土問題に対処する韓国側に比べ、日本には政治的信念がない。学習指導要領や歴史教科書の記述もその時々の日韓関係に左右され、一貫性を欠いている。果たして竹島問題は、それほど優先順位の低い外交課題なのであろうか。