一般的なジャンプ台の助走路や着地点の傾斜は約35度。助走で大事なのは、空気抵抗を最小限にし、加速することである。そのためしゃがんだ「クラウチング」姿勢をとる。踏み切り時のスピードは男子で時速90kmに達するが、高梨はこのスピードが男子並みに速い。秒速1m(時速3.6km)異なると、飛距離は5~20mの差が出ると言われる。身長が151cmと小柄な高梨が、これほどの高速で踏み切れるのは、助走の入り方、姿勢がぶれないなどの特長があると言われる。
飛行は、今や両足を開くV字型が主流で、体を大きく前に傾ける。約2~3秒に飛行の後で、着地する。着地の理想形は足を前後にずらすテレマーク。高梨の飛距離点は抜群だが、着地のテレマークができず減点されることが多かった。しかし、今年のW杯初戦はこれを克服し、飛型点もほぼ満点だった。
着地に深く関わるジャンプ台の構造
実は、高梨はテレマークが特段下手というわけではない。飛距離が出すぎるために、急斜面で着地ができず、斜度が緩いところで、着地するために両足がそろってしまうのである。
こうなってしまうのは、ジャンプ台の構造が深く関係している。ここでジャンプ台について説明しておこう。観戦の面白さを倍増させるには、ぜひ知っていて欲しい知識だからだ。
ジャンプ台には、着地点となる斜面の途中に、「K点」と呼ばれる飛距離点の基準点がある。これを上回ると加点され、下回ると減点される。ちなみにK点は、ドイツ語の「建築基準点」が由来だ。
着地点が斜面となるのは、着地の衝撃を減らすためで、ジャンプ台には、これ以上飛ぶと危険という限界点も設定されている。これが「ヒルサイズ(HS)」。ジャンプ台の規模を表す。高梨の大ジャンプはしばしばこのHSを超える。そのため、危険を回避する意味で、スタートゲートが下げられ、スピードがでないように調整されてしまうのだ。
ジャンプの正否を決める踏み切り
なぜ高梨は安定したジャンプができるのか。