2024年10月10日(木)

日本の医療〝変革〟最前線

2024年8月19日

 生協と生協を母体とする社会福祉法人の48法人で作るのがコープ福祉機構。今回調査した14法人の訪問介護収入の合計は12億9431万円で前年同期より1.3%、1738万円の減少となった。

 利益は、前年度同期が3119万円だったのに対して、955万円の赤字になった。4075万円もの減少である。利益率でみると前年同期が2.3%の黒字が、今期は3%減の0.7%の赤字となった。

 集計された14法人の訪問介護は、高齢者住宅併設型が1割ほどで、ほとんどは地域住民への戸別訪問型だ。厚労省調査で収支差率が高いのは、効率性がいい住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)への併設型が多いためとみられており、生協主体の今回の調査は地域住民向けの訪問介護の一般例となりそうだ。

効果があまりない処遇改善加算

 厚労省が強調する処遇改善加算は6月から実施された。これにより赤字転落が持ち直すのだろうか。コープ福祉機構の山際淳常務理事は「そんなことにはならないだろう。というのも、調査した14法人のほとんどは最上位の処遇改善加算を今回の改定前からは算定している。新規加算の影響はあまりない」と異を唱える。

 それに処遇改善加算は介護職員の収入にだけ上乗せされる。「事業者の経営状況にはほとんど関係なく素通りしてしまう」とも言う。

 また、各地の介護現場では「加算取得の手続きが煩雑で小さな事業所では対応し難い」「資格や条件が厳しい」との声があり、厚労省の目論見通りとなるか疑問だ。

 基準報酬のダウンは早くも倒産の増加にもつながっているようだ。東京商工リサーチによると、6月までの上半期の介護事業者の倒産件数は81件に達した。前年同期の54件の5割増し、昨年1年間の122件を大きく上回りそうだ。

 81件のうち、約半数の40件は訪問介護事業者である。訪問介護事業所とほぼ同数の通所介護・短期入所の倒産は25件に止まっている。

人手不足に拍車をかける

 訪問介護の報酬切り下げは、何よりも、国が訪問介護事業を軽視しているとの印象を与え、先行きの不安感を高めてしまったのは間違いないだろう。春闘とボーナスの賃上げ効果で実質賃金の上昇がみられる他業種と比べ、介護業界の見劣りが明らかになった。ヘルパーの意欲を削ぎ、就労希望者に壁が立ちふさがった。

 何しろヘルパーの有効求人倍率は15倍を超えている。異常だ。ヘルパー自身の高齢化も顕著で70歳代のヘルパーが多い。

 深刻な人手不足なのに、報酬改定に悲観したヘルパーたちが、職場を去る動きが出てきた。ヘルパー不足が事業の休止や倒産につながる。


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