地域によっては、ケアマネジャー不足も起きており、在宅利用者のケアプランを簡素にするため、利用者に安価な住宅型有料老人ホームへの入居を促す動きもあるという。
訪問介護事業所の36.7%は赤字経営と厚労省調査が示している。規模別の集計はないが、都心部の大手事業者には住宅型有料老人ホームなどとの併設や規模の利益がある一方で、小規模の事業所に赤字が広がっているとみられる。
負担すべきは誰か
今回の報酬改定を機に、逼迫する総費用の財源を見直す議論が出てきた。中小事業者や識者たちから「国の負担分を増やすべきだ」とする提言である。
介護保険は当初から、保険とはいいながら、費用の半分は国と自治体からの税が投入された。国が4分の1、残りの4分の1を都道府県と市町村の折半負担だ。
日本より5年前に介護保険法を施行したドイツでは、税の投入はない。すべての費用は国民からの保険料とした。保険料の支払いもサービス利用にも、年齢制限がない。
日本はドイツを手本として新法を作ったと言われるが、実態はかなり異なる。地方自治体を保険者にした。地方分権一括法と同時に施行されたこともあり、「介護保険は地方分権の試金石」と言われた。
4分の1しか費用負担していないが、介護保険は実質的に国、厚労省の管理下にある。そこへ、国の持ち分を増やせば、保険者である市町村の存在がますます薄れてしまう。
やっと浸透し始めた地域包括ケアの推進者、担い手は保険者の市町村である。地域包括ケアに本格的に取り組もうと、大阪府の「くすのき広域連合」はこの3月末に解散した。門真、守口、四条畷の3市で介護保険施行時から広域連合を組んできた。だが、介護や医療、住宅などをきめ細かく相互連携させるには個別各市がリーダーシップを取らねば、と広域連合を止めた。
国の費用負担が高まれば、地域包括ケアの取組みに水を差しかねない。
要介護高齢者はまだ増えていく。保険の原則からすれば保険サービスの利用者がその費用を負担すべきだ。
75歳以上高齢者に厚生年金受給者が増え、国民年金受給者と違い、収入は多い。保険者の自主、自立を保つには、保険料の増額が選択すべき道だろう。