下の表をご覧ください。豊洲市場で生鮮クロマグロの価格を、初競り・1月と年間の平均価格をまとめたものです。
毎年1月の初競りの価格はびっくりするような価格となってニュースになります。2019年のキロ120万円という価格は、一尾で3億3000万円もの価格になりました。
ところが、1月や年間の平均価格と比較してみてください。キロ3000円から高くても5000円程度です。一方で、初競り価格は同8万円から120万円で10万円を超えることは珍しくありません。
また、極端に高いのはマスコミの注目が集まる1尾目だけです。こんな話をマグロ仲卸さんに聞いたことがあります。1尾目の異常価格のあとの2尾目のセリの話です。
「77」という価格が7万7000円か7700円かわからなくなり、結局やり直しで1万2000円になった。いかに宣伝効果がある1尾目の価値だけが高いことがわかります。1尾目はその10倍以上の価格です。
また、大西洋クロマグロの価値を試算する際に、豊洲の初競りの価格がベースになって計算されている報道を見たことがあります。筆者が買付をしていた頃に、「こんなに高い価格を払えるなら、もっと高く買えるはずだ!」などと言われたこともあります。1尾目が高いだけなのですが……(苦笑い)。
サンマの水揚げが近年と大きく違う理由
さて価格のことはさておき、それではなぜ水揚げが昨年、もしくは近年と大きく状況が違うのでしょうか? そこには大きく2つの理由があります。
まずこれまで、小型船から大型船といった具合に、段階的な解禁としていたサンマ漁を、8月10日に一斉に解禁したことでルールが変わったことです。このため、初日の水揚げから漁獲能力が高い大型船の水揚げが増えました。
もう一つは、漁場が近くなっていることです。漁場が港から3~4日航行するのと2日程度なのとでは、往復を考えると、漁業の効率が大きく改善され移動時間のロスが減り、魚を探したり、漁獲したりする時間を増やせるのです。
ちなみに、台湾船や中国船がサンマで日本の漁獲量を追い越した大きな要因の1つは、日本漁船の港から漁場までの往復時間のロスがあります。台湾と中国の漁船は洋上でサンマを冷凍しているので、移動によるロスが日本漁船に比べて非常に短いのです。漁場が近くなれば漁業者にとっては燃料費が削減されるだけでなく、まだ遠いですが、輸送機関が短くなれば鮮度もよくなります。