10月末にはジョージアで議会選挙、モルドバでは大統領選挙と憲法にEU加盟を目標として書き込むことについての国民投票が予定されている。これら諸国では、EUを代表するとの口実によるオルバンの干渉によって、親クレムリン勢力、EU統合反対派、あるいは与党「ジョージアの夢」に有利にバランスが変わり得る。それは、ジョージアとモルドバの社会に広範な否定的影響を及ぼすであろう。
オルバンは11月7日(米大統領選挙の2日後)のブタペストにおけるEPC(European Political Community、欧州政治共同体)の会合にトランプを招くことができる。もし、選挙結果がまだ確定しない状況でトランプを招けば、EPCをオルバンが外交的にハイジャックすることとなろう。
* * *
誤解を与える「平和ミッション」
7月にハンガリーがEU議長国となるや、オルバンは突如としてキーウ、モスクワ、北京を順次訪問したが、彼は一連の訪問を「平和ミッション」と称した。7月11日には、ワシントンでの北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席の後、マール・ア・ラーゴにドナルド・トランプを訪ねて会談した。
彼はかねてトランプと親密であり、トランプと会談したこと自体は驚きではない。何が話し合われたのか分からないが、オルバンはこれも「平和ミッション」と称している。
オルバンはウクライナ支援に反対する一方、直ちに和平協議を行うことを提案しており、トランプと立場を同じくしている。EUがトランプの返り咲きの意味合い、特に、彼の保護主義的貿易政策、彼の対ウクライナ政策(ウクライナ支援を停止し、ウクライナにロシアの条件による和平を強要しかねないこと)および、彼のNATOに対するコミットメントの信頼性について懸念を深め、特別のチームを編成して対応策を研究しようという状況にある時に、オルバンがトランプとの親密さを誇り、トランプ再選の暁に何が出来るというのか、理解出来ない。