2024年7月4日付の英フィナンシャル・タイムズ紙で、同紙欧州担当編集委員トニー・バーバーが、7月1日以降、欧州連合(EU)はその中核的価値を蔑視するハンガリーが議長国になるという奇妙な状況にあるが、独仏両国の国内政治の混迷がEUにもたらす暗雲に比べれば、その問題の程度はむしろ小さいという論説を書いている。
7月1日以来、EUはその中核的価値を損なうと多くの加盟国から非難されている国によって代表される。今後6カ月、ハンガリーはEUの議長国を務めるが、その仕事には、会合の議長を務め、27の加盟国すべてに共通の政策を推進することが含まれる。
議長国としてのハンガリーはEUが抱える唯一の問題とは言えない。フランスの議会選挙の結果およびドイツの3党連立政権の低迷する命運はEUの将来に暗雲をもたらす。
EUが円滑に機能する上で、独仏協力は必要な条件である。しかるに、両国における国内政治の傾向が両国の権威を害し、欧州レベルで問題を惹起している。
09年のリスボン条約以来、多くの重要な問題は欧州理事会(EU首脳会議)を主宰する議長およびEU外交の長である上級代表が取り仕切ることとなっているので、ハンガリーが成し得る害には限界がある。EUは、ロシアの凍結資産が生み出す利益を用いて購入した武器をウクライナに供給することに対するハンガリーの反対を回避する法的な手続きを既に見出している。
ただ、そうだとしても、議長国ハンガリーの潜在的に有害な効果に無頓着であるべきではない。色々な形で問題は起きる。
議長国には、農業、環境、移民、EU拡大のような分野で議題を設定する役割があるので、影響力を行使出来る。ハンガリーが公表した7つのプライオリティの中には、「不法移民を阻止すること」「人口構成の問題に対処すること」が含まれている。如何なる政府も6カ月で人口問題のような複雑な問題に関するEUの政策は変え得ない。しかし、ハンガリーが問題をどのように提示するかによるが、議論は非生産的で分裂を誘うものとなり得よう。