EUにとって、議長国としてのハンガリーは、他の加盟国で強硬右派が既に権力にあり、または権力に近づきつつある事実に比較すれば、問題の程度は小さい。欧州が深刻な安全保障の脅威と経済的挑戦に向かい合う集団的な意思を最も必要としている時にあって、強硬右派の進出はEUの足枷となりかねない。そうなれば、オルバンはその責任の幾分かを担うこととなろうが、その全部という訳ではない。
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自国の利益追求をはばからない指導者
ハンガリー、特に(7月1日以降本年末までの)EU議長国としてのハンガリーの行動について、その潜在的な有害な影響に無頓着であるべきではないとしつつも、EUを牽引する役割を担う独仏両国の国内政治の混迷がEUに期待される力強い行動にもたらす暗雲に比較すれば、ハンガリーの問題の程度は小さいと、この論説は論じている。
しかし、これら二つの問題はその性格を全く異にする。オルバンはハンガリーがEU加盟国であることによる便益は享受し、その便益を最大化することに熱心であるが、EUが一致して追及する利益と価値にはほぼ無関心であり、EUと対立してでも自国の狭い利益を追求して憚らない指導者とみられる。EUにおける極右勢力の台頭は問題であるに違いないが、(ポーランドの政権が交替した現在)オルバンの特異性は際立っている。
確かに、ハンガリーの妨害をEUが回避することに成功した例もある。この論説が言及している、ロシアの凍結資産のウクライナ支援への活用はその例である。
6月24日、EU首脳会議はハンガリーの拒否権を迂回する法的理論武装をして、運用益から14億ユーロを当面のウクライナ支援の武器調達に当てる決定を行った。また、同じく将来の運用益をもって融資の返済に充てることとして、年末までにウクライナに500億ドルを融資するとの6月のプーリア主要7カ国(G7)サミットのコミットメントの履行に道筋をつけることに成功した。