フィナンシャル・タイムズ(FT)紙が7月1日付けで米欧におけるナショナルなポピュリズムの伸張について、同紙コメンテーターのラックマンによる論説‘Le Pen, Trump and liberal panic’を掲載している。概要は次の通り。
2017年5月、マリーヌ・ル・ペンは、フランス大統領選挙でエマニュエル・マクロンに敗北を喫したが、7年後、ル・ペンの国民連合(RN)は国民議会選挙の第一回投票において最大の得票を得て、マクロンの党「ルネサンス」は大敗北を喫した。
米国では、08年の大統領選挙でバラク・オバマが当選し、米国はポスト人種の時代に入り、民主党の支配が続くだろうと予想された。ところが、13年後の今日、復讐に燃えるトランプは勝利の笑いを浮かべつつある。
米国でもフランスでも、中道とリベラルはパニックに陥っている。ナショナルなポピュリズムの亢進(こうしん)は、西側政治にとって、一時的な異常というよりは、恒常的な、また、決定的な現象になったかに見える。左派と右派との古い対立に代わり、リベラルな国際主義とポピュリズムによるナショナリズムとの間に新たな分断線が現れた。
米国でも欧州でも、ポピュリズムによるナショナリズムは、移民、貿易、気候変動、「社会正義」との戦い、ウクライナにおける戦争について同じような政策を追求している。トランプもル・ペンもエリート主義者の「グローバリスト」は、制限のない移民を受け入れることでそれぞれの国を破壊しつつあると主張している。
保護主義と「国家としての選好」が重視されている。環境保護は新たなターゲットである。ロシアのプーチン大統領は伝統的な価値と国家の役割の擁護者である。
こうした現象はフランスと米国に限ったことではない。英国、オランダ、ドイツ、オーストリアなどでもナショナルなポピュリズムが台頭している。
トランプとフランスの国民連合(RN)の復活は、西側の民主主義の将来への懸念をかき立てているが、リベラル派はパニックに陥る必要はない。米国、フランスの民主主義を解体することは簡単なことではない。マクロンやオバマが目指したようにナショナルなポピュリズムに決定的な勝利を収めることは幻想に終わったが、リベラルな国際主義が決定的に敗北するという懸念もおそらくは誇張されたものだ。