2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年7月23日

 国民議会選挙の第二回投票の結果は、左派、中道リベラル、極右の三者が鼎立する構図となった。「右か、左か」の対立軸と「リベラルな国際主義か、ポピュリズムによるナショナリズムか」の対立軸が交錯する構図であろう。

 「右」は「ポピュリズムによるナショナリズム」との親和性が強いが(「右」が「リベラルな国際主義」で踏みとどまるのはつらい状況になってきている)、「左」は「リベラルな国際主義」に向かうとは限らず、ナショナリズムにも傾きうる。そうした点を踏まえれば、それぞれの国によって状況は異なるが、二つの軸で見ておく方が良いであろう。

 この論説の注目すべきもう一つの点は、ナショナルなポピュリズムの伸張にもかかわらず、「リベラル派はパニックに陥る必要はない」と指摘している点である。ラックマンが挙げる論拠は、ポピュリストが政権に就いても、野党の立場で主張している政策によって問題解決はできず、有権者はそれに失望し、幻滅するだろうとの点にある。確かに、ナショナルなポピュリズムの傾向を強めた保守党が総選挙で厳しく罰せられた英国から見れば、そうした見方にもなろう。

それでも、ポピュリスト政権は危険

 だが、果たして「パニックに陥る必要はない」と悠長に構えてよいのだろうか。第一に、たとえ期間は限られていたとしても、「次の機会」が来るまでに、ポピュリスト政権によって失われてしまうものがある。特に、安全保障に関することは取り返しが利かない。18年にトランプが離脱したイラン核合意はその典型である。

 第二に、「次の機会」までにゲームのルールが改変されてしまう可能性がある。トランプは、二期目を得たら、政敵に復讐するとともに、自らの支配を貫徹するために制度自体の改変に着手する見込みとされる。ハンガリーやポーランドを考えれば、「民主主義を装う権威主義」は、途上国や新興国だけの専売特許ではない。

 第三に、選挙で敗れた方が四分五裂してしまえば、「次の機会」をつかむことは難しい。選挙で敗れれば、責任追及や路線闘争となり、遠心力が働きがちだ。そうした中、有権者からそっぽを向かれた側が、体制を立て直すのは容易ではない。

 ポピュリスト政権はエラーもするだろうし、有権者の不満は政権に向けられることにもなろうが、政治を動かす操縦桿をも握ってもいる。「次の機会」がリベラルな国際主義にとり有利な戦いになるとは限らない。

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