ポピュリストが実際に政権に就けば、有権者が幻滅するのも早いだろう。英国では、ポピュリストの中心プロジェクトであった欧州連合(EU)離脱は失敗だったと大多数が考えるようになっており、地味なキア・スターマー労働党党首を次の首相に選んだ。
ナショナルなポピュリズムは、ポーランドとブラジルで政権の座を失い、トルコとインドにおいても選挙で後退を余儀なくされている。米国の有権者はトランプの混沌とした任期の後、トランプに背を向けた。トランプの復活の一因は81歳の現職ジョー・バイデンという極めて弱体な候補が競争相手であることによる。
ナショナルなポピュリストが提示する単純な解決策は、実施に移されたと途端に失敗する。フランスも米国もこの痛い教訓を再度学ぶこととなろう。悲しいことに、彼らの愚かな考えの結果は世界中に及んでしまうことになりそうだ。
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リベラルな国際主義か、ポピュリズムによるナショナリズムか
このラックマンによる論説は、米大統領選挙のテレビ討論会の4日後、フランスの国民議会選挙の第一回投票の結果が判明した翌日に書かれたものである(その後に行われた第二回投票では、国民連合〈RN〉は第三勢力に止まった)。
この論説の注目すべき点の一つは、米欧におけるナショナルなポピュリズムの伸張を踏まえて、各国の政治における対立軸として「右か、左か」に代わって、「リベラルな国際主義か、ポピュリズムによるナショナリズムか」が重要になってきていると指摘している点である。
ラックマンは、新たな対立軸が現れている論点として、「移民、貿易、気候変動、『社会正義』との戦い、ウクライナにおける戦争」を挙げている。確かに、日本を含めて先進国の多くで「社会的価値」をめぐる問題が社会を分ける重要なフォールト・ライン(断層線)となってきている。
一方、「右か、左か」の対立軸が意味を失ったと考えるのも早計であろう。フランスの各党の位置づけを考えてみれば、極左、左派から中道リベラル、右派、極右と左右の軸に各党が並ぶ構図である。