海老蔵が十八番のなかから、平家の武将である悪七兵衛景清にからまる4作品をひとつにまとめあげたのは、初春花形歌舞伎の「寿三升景清」である。新橋演舞場で3日観た。
源氏に敗れた景清が、中国の三国時代の関羽の魂と一体化して、源氏を討とうとする強い意思を現わす。しかしながら、ついにはその怨念を昇華して天空に舞う。
そこには、栄華と衰亡に絡む人生の無常の物語が現れてくる。海老蔵が語っているように、この物語は現代に通じる。
歌舞伎としては初めて、津軽三味線が使われた。最終幕では舞台に観客の桟敷が設けられるとともに、照明がうす暗くなってまさに江戸の芝居小屋の雰囲気をかもしだした。
伝統といまの融合こそ、十八番が長らく観客の心をつかむ工夫である。
大河ドラマの新趣向の先に期待
「軍師 官兵衛」の滑り出しは、これまでの戦国物語とは異なって、激しい戦闘シーンや英雄譚ではない。
大河ドラマの十八番である戦国物語に、企業で働く同僚、上司、そして家族のいまを重ね合わせようとしているようにみえる。
第1回の視聴率は20%を下回った。十八番の新しい試みに観客がちょっと戸惑ったのではないか。海老蔵の舞台の津軽三味線が、賛否を呼んでいるように。
もうしばらくは、大河ドラマの新趣向の先を観てみようではないか。
なにより、宮藤官九郎脚本のドラマ、映画「木更津キャッツアイ」シリーズで、爆発力ともいえる演技をみせた岡田准一の官兵衛の物語は、始まったばかりである。(敬称略)
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