2024年9月3日(火)

BBC News

2024年9月3日

ドイツ東部の2州の州議会選挙で移民排斥を掲げる極右野党「ドイツのための選択肢(AfD)」が躍進したことを受け、オラフ・ショルツ首相は2日、各州の主要政党に対し、AfDに協力しないよう求めた。

東部テューリンゲン州で1日に行われた州議会選挙では、AfDが第1党となった。州議会で極右政党が勝利したのは、第2次世界大戦後で初めて。

同じ日にザクセン州であった州議会選挙でも、AfDは勢力を伸ばし、第1党と僅差で第2党となった。

AfDは両州で、連邦憲法擁護庁(BfV)によって右翼過激派に分類されている。テューリンゲン州で同党を率いるビョルン・ヘッケ氏は以前、ナチスのスローガンを使用した罪で罰金を科せられたことがあるが、故意の使用は否定している。

ショルツ首相は2日、AfDに対するファイアウオール(防火壁)を維持することで、同党が州政権を握るのを阻止するよう、他党に求めた。

ショルツ氏は今回の選挙結果を「苦しく」、「懸念がある」ものだとしたうえで、「全ての民主的政党は今、右翼過激派を排除した安定した政権を樹立することを求められている」と述べた。

AfDのアリス・ヴァイデル共同党首はこれに対し、テューリンゲンとザクセン両州の有権者は、AfDに「非常に明確な統治の権限」を与えたと述べた。

ヴァイデル氏は、ショルツ首相のAfDを排除した州政権形成の要求を無視するよう各党に呼び掛け、そうした動きは「大勢の民主的参加を阻害する」ものだと述べた。

また、「ファイアウオールは非民主的だ」と付け加えた。

不安定な連立の可能性

AfDは第1党となったテューリンゲン州でも、他党の協力がなければ州政権を形成できない。第2党の保守派・キリスト教民主同盟(CDU)は、AfDとの連立は「検討しない」と明言している。

一方で保守派は、議会で過半数を確保するには計算上、左派と組む必要がある。

保守派は過去に、左翼党との共闘を拒否している。そのため、より過激な左派ポピュリスト政党「ザーラ・ヴァーゲンクネヒト同盟(BSW)」との連立を模索しなければならない。これはCDUの多くの党員にとって受け入れがたい選択肢だ。

一方でテューリンゲン州のヘッケ氏は、CDUの有権者の中には、両党が協力すれば喜ぶ人がたくさんいると示唆している。

いずれにしろ、AfDはテューリンゲン州議会(定数88)で3分の1以上の議席を獲得しており、州憲法の改正や判事の任命など、議席の3分の2以上の賛成が必要な投票での「可決阻止少数」は確保している。

だが、どの連立が成立した場合でも、とても不安定な政権になる可能性が高い。

ザクセン州では、CDUが42議席、AfDが41議席、BSWが15議席となっている。

ショルツ政権の不人気ぶりが浮き彫りに

今回の州選挙は、オラフ・ショルツ政権を形成する社会民主党(SPD)と緑の党、自由民主党(FDP)の不人気ぶりを浮き彫りにした。ショルツ政権は、各党の色が赤、黄、緑の3色であることから「信号機」政権と呼ばれている。

テューリンゲン州では、この3党のうちSPDだけが議席を獲得。ただ、わずか6議席だった。ザクセン州でも、SPDは5位と振るわなかった。

そのため、3党は国政の連立政権の維持で、一段と厳しい立場に置かれることになる。

すでに各党の有力者は、自分たちの価値観を守るために立ち上がる必要があると言っている。このことは、国政内部でさらなる亀裂を生む可能性が高い。閣僚らは、連立を解消して政府を崩壊させるようなことはしないと言っているが、この発言自体、連立政権がいかに困難な状況にあるかを示している。

AfDのヴァイデル共同党首は、国民は与党3党を「投票で追い出した」と述べ、ショルツ氏とそのパートナーたちは「荷物をまとめて椅子を明け渡すべきだ。有権者は違う政権、違う政策を求めている」と指摘した。

移民問題への影響

1日の州議会選挙で、AfD支持者らの最大の争点は移民問題、特に難民と亡命問題だった。

AfDはまだ地方政治でも国政でも政権から遮断されているが、政治の主流に影響を及ぼしている。

AfDが2017年に連邦議会に進出した際、その激しい反移民のレトリックが、議論を粗雑にしたと批判された。

政治やメディアの言説がより攻撃的になったという意見もある。CDUのフリードリヒ・メルツ党首は、AfDのレトリックをまねたと非難されている。

いずれにせよ、AfDに流れた有権者を取り戻すために、主要政党は移民問題などでより厳しいことを言い、申請が却下された亡命希望者の国外退去を容易にする措置を推進している。

ベルリンのトルコ系コミュニティーの統括組織で共同代表を務めるアスリハン・イェシルカヤ=ユルトベイ氏は、今回の選挙結果を「衝撃的で恐ろしい」とした。同氏は、自分と同世代の若者の多くが、すでにドイツを離れることを計画していると付け加えた。

「移民の背景を持つ市民の、この国での将来が問われている」

東部のもう一つの州、ブランデンブルク州では3週間後に州議会選が予定されている。世論調査ではAfDが優勢だが、SPDとCDUとの差は数ポイントにとどまっている。

(英語記事 Scholz urges firewall against far right after election win

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cy4y2xkp2xdo


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