米国のシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のブランシェット中国研究部長が、Foreign Affairs(電子版)の8月13日付け論文‘China Is in Denial About the War in Ukraine’において、中国のアナリストの間では、ウクライナ戦争の影響につき当初の悲観論が今や楽観論に取って代わってしまったとして、彼らがそのような認識に至っていること自体が台湾海峡や世界を危険な方向に導くことになりかねない、と懸念を示している。概要は以下のとおり。
ロシアによるウクライナ侵攻後の数週間、中国政府は慎重ながらもロシアを支持する姿勢を見せた。しかし中国のアナリストは、この紛争が中国と欧米の関係にダメージを与え、世界経済をさらに分裂させ、中国の最も重要なパートナーであるロシアの富と力を弱める可能性があるとして、公然と懸念を表明していた。
ところが戦争開始から2年以上が経ち、そのような厳しい悲観論は慎重な楽観論に取って代わられた。アナリストたちは、ロシアと中国の経済は西側諸国の制裁による壊滅的な被害をほぼ回避したと考えている。ロシアは防衛産業基盤を再構築し、極端な外交的孤立をも回避した、ということだ。
ウクライナ戦争に関するこれらのアナリストの結論には、明らかに見過ごされている現実がある。中国は実際、プーチンの戦争とそれに対する中国の経済的、外交的支援の結果としてコストを払っているのだ。
多くの欧州諸国との関係は容易には回復できないほど悪化した。また、ウクライナ領土を奪取したいプーチン大統領の欲望と、台湾を吸収したいという中国の長年の願望の対称性は、米国とインド太平洋地域の同盟国に防衛強化を促している。
中国の専門家は、プーチンの戦争について一枚岩ではない。しかし総じて彼らの初期の反応は、この戦争が冷戦後の歴史的な転換点となるのではないかと懸念するものであった。中国の学者たちは一貫して、ロシアの侵攻が「歴史の分岐点」であり、国際秩序の大きな再編を促すだろうと結論付けていた。