2024年7月30日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年7月30日

 ウォールストリート・ジャーナル紙の7月11日付け社説‘NATO Wakes Up to the China Threat’は、ウクライナ戦争でロシアの継戦能力を事実上支えているのは中国であるとして北大西洋条約機構(NATO)が非難したことに注目した上で、今日の脅威がグローバルな広がりをもち、同時に冷戦初期のような危険で不安定な時代を迎えつつあると指摘している。要旨は次の通り。

南シナ海で軍事展示する中国人民解放軍(ロイター/アフロ)

 7月9~11日にワシントンで開かれたNATO首脳会議で浮かび上がった内容は注目に値する。西側同盟は世界の危険かつ新たな現実に対して強靭さを増しているのだ。

 NATOはウクライナに対する新たな長期支援を打ち出した。もう一つの注目すべきニュースはNATOが、プーチンの戦争を支援していることに対し中国を非難したことだ。NATOはその共同宣言において、中国は「いわゆる『無制限』のパートナーシップとロシアの防衛産業基盤への大規模な支援を通じて、ロシアのウクライナ戦争の決定的な支援者となった」と述べたのだ。

 これは正しい。中国によるロシア支援はもっと世間の注目を集めても良い。

 戦略国際問題研究所(CSIS)によれば、中国は「数百万ドル相当の半導体、チップ、ボールベアリング、ナビゲーション機器、戦闘機の部品、その他のコンポーネント」をロシアに販売している。国家安全保障担当のマット・ポッティンジャーが今春本紙で主張したように、バイデン政権は、対ロシア支援を中国に対するレッドラインと定めたならば、実際に罰則を課すようにしなければならない。

 宣言はまた、今日世界の脅威は地球規模であり、欧州で起きていることを太平洋と切り離すことはできないことを強調している。

 もう1つの歓迎すべき動きは、米国とドイツが、米国が欧州大陸に「長距離火力」をさらに投入すると発表したことだ。米国は2026年に、開発中のトマホークその他、極超音速ミサイルを含む「一時的」配備を開始する。

 これらの長距離ミサイルには抑止力がある。「NATOが直面する課題の1つは時間と距離だ」と、大西洋評議会のマシュー・クロニグ氏は言う。

 プーチンが戦車でエストニアに侵入した場合、NATOはこれを阻止できる前線配備部隊を持っていない可能性があるが、部隊の派遣には時間がかかる。長距離砲火力はNATOの迅速な対応に役立つだろう。

 米国はまた、太平洋でより多くの長距離ミサイルをどうしても必要としているが、それは生産量を増やさなければならないことを意味する。そのためには防衛費の増額が必要となり、欧州が責任を果たしているかどうかという、繰り返し問われる疑問につながる。今次NATOサミットの宣言は、「多くの場合、目標の対国内総生産(GDP)比2%を超える支出が必要になる」ことを認めている。


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