2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年1月22日

 このように有権者の目に直接晒されるためか、果敢なビジネス精神という点では市は州に遅れを取りがちだ。先日中国を訪れたアラバマ州の財界代表団は、サイバースパイ活動を行っているとしてワシントンが非難する中国の通信機器大手、華為(Huawei)からの投資を歓迎すると表明したが、いくら熱心な市長でもそこまで踏み込む者はいないだろう、と報じています。

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 70年後半から80年代にかけては、米国首長が日本詣でをしていたことを思い起こすと、この記事が扱っているのは米中ビジネス関係ですが、日本にとっても今後の進出競合・協調という観点から参考になります。

 かつて、子会社のココム違反嫌疑が大きな経済制裁問題に発展した東芝事件を教訓に、東芝は政治リスク回避を兼ねて全米50州に事業所・拠点を持つようになり、他大手日系製造業なども追随しました。これは実に効果的で、米国の政治家が日本の経済人を見る目が大いに温かいものになったようです。

 地場産業の再生を目指す米国の地方自治体と、通商摩擦回避及び巨大市場への近接性という経済合理的理由から進出を図る外資企業の間には、基本的に共通利益が存在します。国家体制の異なる米中間では、ビジネスと安全保障の利害対立も存在しますが、それでも、グローバル化が進む中、中国からの海外生産移転は増加し、それに伴って対米直接投資も増えていくでしょう。中国に19万人の従業員を抱える生産拠点を置く台湾のFOXCONNが、一部を米国に移す動きもあり、テキサス州とインディアナ州に加えて、最近、ペンシルバニア州都のハリスバーグ市に進出を決めました。

 翻って日本企業はどうでしょうか?既に米国に進出済みの大手製造業に加えて、今後は大手サービス業、R&D研究施設、そして中堅・中小企業の製造・サービス業にとっても、対米進出は新たな付加価値をつける機会になるでしょう。この記事は、日本の官民連携の海外展開の支援先が、アジア地域だけではないことを改めて思い起こさせてくれます。

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