一つ目は、明細書を診療機関側が無料発行せずにすむ「例外規定」の存在です。制度導入当時、医療機関が患者が加入する健康保険組合などに請求する医療費を電子データで請求できなかったり、自動支払い機などの改修が必要だったりする場合は、医療機関側が準備を整えるまでの当面の措置として、患者から希望がある時だけ対応すればよいとされてきたからです。その結果、それらを理由に全患者への無料発行をしない医療機関があったわけですが、例外規定を永遠に続けてしまうと、いつまでも全患者への無料発行は実現しません。
そこで、2年前の2012年の中医協の議論によって、今年(2014年)の4月1日からは、まず、ベッド数が400床以上の大きな病院でその例外規定を無くし、猶予期間を終わりにすることが決まりました。
したがって、今年の4月からは、ベッド数が400床以上の大学病院などの大きな病院では、必ず全患者の診療明細書が発行されることになったわけです。
400床以上の病院の数は、病院全体の1割程度ですが、患者数で言えば、より大きな割合になることは間違いなく、診療明細書を受け取る患者が一気に増えることになるでしょう。
これを機に、それよりも規模の小さい病院や診療所でも猶予される期限を明示して、全患者への無料発行を徹底させるべきです。
当初は一定の猶予期間が必要だったかも知れませんが、方針が決まって4年が経つ今、これ以上、いたずらに期間を延ばしても、発行に向けた取り組みの決断を遅らせるだけになり、意味がないでしょう。今、中医協ではまさにその議論がされていて、今月終わりから来月中旬までに決定される内容がどのようなものになるか、注目されます。
「希望する患者に」という誤解
もう一つは、希望する患者だけに無料発行すればよいと制度自体を誤解している診療所があることです。「希望する患者への発行」は6年前に義務づけられ、4年前にそれが「全患者への無料発行」に変更されました。『窓口に「不要な方は申し出て下さい」という趣旨の貼り紙をするなどした上で、「不要」との申し出がない限り、希望の有無を聞かずに発行する』という方法も具体的に示されたのです。
にもかかわらず、一部の診療所では、いまだに患者に必要かどうかを聞き、一度「不要」と言えば、後日の診療でも明細書を発行しない運用をしています。厚生労働省は2年前、こうした運用を是正するため通知を出しましたが、その後は検証しておらず、是正に向け、より真剣に取り組むべきです。