2024年10月10日(木)

BBC News

2024年10月10日

アメリカのウォーターゲート事件報道などで知られるベテラン記者、ボブ・ウッドワード氏が来週発売の新著で、ドナルド・トランプ前米大統領について、新型コロナウイルスの世界的流行で検査機器が不足していた時期に、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に個人的な使用のために検査機器を送ったと書いていることが明らかになった。米大統領選の共和党候補となっているトランプ前大統領側は、事実ではないと強く否定している。

ウッドワード氏の新著「ウォー(戦争)」をめぐっては、発売を前に米メディアが内容の一部を報じている。

それによると、トランプ候補は大統領在任中、「プーチンにアボット社のポイント・オブ・ケア検査機を個人使用のためにひそかに送った」と書いてあるという。

本にはまた、プーチン氏が当時、新型コロナウイルスに感染し病気になることをひどく心配していたとの記述があるという。プーチン氏はトランプ候補の評判悪化を恐れ、検査機器の送付について公表しないよう求めたとも書いてあるという。

米紙ニューヨーク・タイムズによると、プーチン氏がトランプ候補に、「誰にも言わないでほしい。みんな私ではなく、あなたのことを怒るはずだから」と言うと、トランプ候補が「かまわない。分かった」と答えたと、ウッドワード氏は書いている。

こうした報道は、11月5日の大統領選挙を前に、トランプ候補とプーチン氏の関係に関する疑惑を再燃させている。

トランプ候補は以前、ロシアによるアメリカでの選挙介入に共謀したと非難された。だが司法省は証拠を発見できず、同候補が捜査妨害をしたのかについての結論も出なかった

米メディアによると、トランプ候補が大統領退任後もひそかにプーチン氏と連絡を取り続けているとの記述も、本に出てくるという。

トランプ氏は否定

トランプ候補はABCニュースで、ウッドワード氏を「うそつきだ。たちの悪いうそつきだ。頭がおかしくなっている」と批判した。

トランプ陣営も、すべての「作り話」が事実ではないとした。

同陣営の広報担当のスティーヴン・チャン氏は8日、「安売り書店のフィクションのコーナーで値引き品のかごに入れられるか、トイレットペーパーとして使われるかのどちらかでしかないこのごみのような本のために、トランプ大統領が取材に応じたことは全くなかった」とBBCに文書で説明した。

本の中では、トランプ候補とプーチン氏が繰り返し連絡を取り続けていたという内容は、トランプ候補の匿名側近1人の話をもとに書かれているとされる。

ニューヨーク・タイムズによると、この本には、トランプ候補の側近の1人が同候補の私邸マール・ア・ラーゴ内のオフィスで、同候補がプーチン氏と電話ができるよう退室を命じられた場面が描かれているという。

この側近は、トランプ候補とプーチン氏について、同候補が2021年にホワイトハウスを去ってからも7回は会話をした可能性があると述べたという。

ロシア大統領府は9日、両者が話をしたことを否定した。

ウッドワード氏の本は、両者の会話の内容には触れていないという。また、両者が接触したとされることについて、トランプ陣営関係者の疑念の声も取り上げているという。

BBCはこの本の内容をまだ確認していない。ニューヨーク・タイムズによると、ウッドワード氏はこの側近の話を裏付けることはできなかったと書いている。また、同紙が取材した複数の消息筋は、トランプ候補が大統領退任後にプーチン氏と接触したことは知らないと答えている。

ウッドワード記者とは以前から対立

ウッドワード氏は、リチャード・ニクソン政権を崩壊させたウォーターゲート事件を暴いたことで有名になった。その後も、権力中枢の情報源への取材を基にしたベストセラー本を何冊も書いている。

トランプ陣営の広報担当はウッドワード氏を「頭がおかしい」、「錯乱している」と批判。「ウッドワードは怒りっぽい小男で、録音内容を無許可で公表してトランプ大統領に訴えられたため、明らかに動揺している」と主張した。

トランプ候補は以前、ウッドワード氏の2021年の著書「レイジ(怒り)」で同氏の取材に応じた。その後、インタビューの録音を公開する許可は与えていないとして、ウッドワード氏を訴えた。同氏はトランプ候補の主張を否定している。

ウッドワード氏の古巣、米紙ワシントン・ポストによると、今回の本は、米外交をめぐる過去4年間の争いと、それが展開された米政界の厳しい環境の上に、トランプ候補が落とした長い影についても検証しているという。

本にはまた、ジョー・バイデン大統領が、メリック・ガーランド氏を司法長官に起用したことなど、自身が失策と思うことについて率直に語っている言葉も含まれているという。

ガーランド氏が指名した特別検察官によって息子ハンター氏が起訴されたことを受け、バイデン氏は側近の1人に、「ガーランドを選ぶべきではなかった」と話したと、本には書かれているという。

(英語記事 Book claims Trump secretly sent Covid test machine to Putin during shortage

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/crkd1lkgxp8o


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