テニス男子のラファエル・ナダル選手(38)が10日、今シーズン限りで引退すると発表した。4大大会(グランドスラム)のシングルスで通算22回の優勝を果たした、スペインを代表するスポーツ選手。
元世界ランキング1位のナダル選手は来月、スペイン・マラガで開かれる国別対抗戦デヴィスカップ・ファイナルズに同国代表として出場する予定で、これが最後の公式戦となる。
ここ2シーズン、けがのためほとんどプレーしていなかった。今年いっぱいでの引退の可能性については、昨年から示唆していた。
ナダル選手は10日に公開されたビデオメッセージで、「プロテニスから引退することをお伝えする」と発表。
「ここ何年かは難しかった。この2年間は特にそうだった」、「限界を感じずにプレーできていたとは思わない」と述べた。
これまで常々、体が許す限りプレーを続けたいと話していた。
しかし、今年7月にパリ五輪でノヴァク・ジョコヴィッチ選手(セルビア)に屈辱的な敗北を喫したのを経て、引き際だと判断した。
ナダル選手は、「明らかに難しい決断であり、出すまでしばらく時間がかかった」、「でも、人生ではすべてのことに始まりと終わりがある」と話した。
「クレーの王者」
ナダル選手は「クレー(赤土)の王者」と呼ばれた。
パリのローラン・ギャロスのクレーコートで行われる全仏オープンでは、通算116試合を戦って112勝。史上最多14回のシングルス優勝を果たした。4大大会の一つでこれほど優勝を重ねた選手は他にいない。
全米オープンは4回、全豪オープンとウィンブルドンは2回ずつ制覇した。オリンピックのシングルスとダブルスでも金メダルを獲得。デヴィスカップではスペインの4回の優勝(直近は2019年)に貢献した。
長年のライバルで4大大会シングルス24回優勝のジョコヴィッチ選手、同20回優勝のロジャー・フェデラーさん(スイス)とともに「ビッグ3」と呼ばれた。2000年代前半から男子テニス界で圧倒的な強さを誇り、多くのファンを魅了した。
フェデラーさんは2022年に引退しており、「ビッグ3」で現役を続けるのはジョコヴィッチ選手だけとなる。
15歳でプロ選手に
ナダル選手は3歳の時おじからテニスを教わり、15歳でプロに転向。翌2005年、全仏オープンで初優勝した。
2008年にウィンブルドン、2009年に全豪オープンをそれぞれ初制覇。2010年には全米オープンでも優勝し、「生涯グランドスラム」を達成した。
ただ、ナダル選手といえば全仏オープンであり、ローラン・ギャロスには2021年、フォアハンドを打つナダル選手の像が建てられた。
最後の4大大会優勝も全仏オープンで、2002年の36歳の誕生日の2日後、大会を制した。
テニス界から感謝の声
テニス界からはナダル選手への感謝の声が相次いだ。
フェデラーさんは、「なんてキャリアなんだ、ラファ! この日が来ないことをずっと願っていた」、「忘れられない思い出と、私たちの愛する競技での素晴らしい功績に感謝する。本当に光栄だった」と述べた。
スペインの男子トップのカルロス・アルカラス選手は、「子どものときテレビであなたを見て、テニス選手になることを夢見た。その後ローラン・ギャロスでスペイン代表としてオリンピックに出場し、あなたと共にプレーするという素晴らしい機会に恵まれた!」、「あらゆるレベルで模範となってくれて本当にありがとう。あなたのレガシーは唯一無二だ。あなたのことは心底楽しんだし、デヴィスカップのあとに引退したらとても寂しくなる、ラファ!」とのメッセージを発表した。
現男子世界ランキング1位のヤニック・シナー選手(イタリア)は、「テニス界全体にとってつらいニュースだ。彼と知り合えたことはとても幸運だった。彼は信じられないような人だ」、「彼のプレーを見て、私たちは多くの感動を覚えた」と述べた。
女子世界ランキング4位のココ・ガウフ選手(アメリカ)は、「あなたは素晴らしい! あなたの偉大さとプロとしての姿勢を目の当たりにし、そこから学ぶことができたのは本当に素晴らしかった」とインスタグラムに投稿した。